セーリング用の帆船は、12人乗り。11人(男性8人、女性3人)の新入生と、インストラクター1人が同乗する。清水さんのチームは、清水さん以外全員が、アメリカ在住歴の長い人たちだった。
4日間は、寝袋で船上泊、残りは無人島でテントに泊まる。食べ物、水、寝袋、テント、海図、方位磁石など必要最低限のものだけを持ち、船に乗り込む。12人が横になると身動きが取れないほど小さな船だ。
学生たちは事前のイントロダクションで海図の読み方や操縦法などを習い、ハリケーン島に向けて出航。半日ごとに交代で、「船長役」を務める。
船長は、操縦桿を握り、海図と方位磁石を見ながら、帆を張るタイミングやオールで漕ぐ方向などをチームメートに指示していく。同乗するインストラクターは、よほどの危険がないかぎり、口を出さないルールだ。
清水さんは、船に乗ってすぐに「やばい」と思ったという。
「途端に船酔いに襲われたんです。申し込んだときは、まさか、こんな小さな船だとは思いもしませんでした。船の上でずっと吐き続けましたね(苦笑)」
しかも運悪く、清水さんたちのチームは初日から夏の嵐に見舞われたのだ。
「寝袋から何から何までびしょぬれ。日中はスペースを確保するため寝袋をしまい込んでいて、乾かせないので、夜は異臭を放っていました。時差ぼけで、夜もあまり眠れず、風邪までひいて、最悪の体調でした」
そんな極限状態の中、6日目の最終日、清水さんが船長になる日がやってきた。折しも、海上は濃霧に包まれ、方向がよくわからない。しかも、体調も悪く、今にも倒れそうなほどふらふらだった。頼りなく操縦桿を握る清水さんに、見かねたアメリカ人男性が声をかけてきた。
「マリコ、大丈夫? 今、みんなが危険な状態なのは、わかっているよね? 船長役、できなかったら、できないって言ってほしい。このままやるのなら、仕事を早くみんなに割り振ってくれ。みんなでフォローするから」
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