清水さんとクリスさんは2011年9月、クラスメートとして出会い、グループ旅行や交換留学で一緒に時間を過ごすうちに親しくなった。清水さんは、クリスさんに一度、「なぜそんなに熱心に活動を行うのか」聞いたことがあった。
「僕は愛する家族からの理解も得ていて、LGBTの中で恵まれた立場にいるからこそ、先頭に立って活動を行うことができると思っている。『僕はこういうカテゴリーに属しています』とアイデンティティを堂々と主張できるような社会へと変わっていけるように手助けしていくことが、僕の義務だと思っているよ」
清水さんは、クリスさんの言葉を聞いて、衝撃を受けたという。
「クリスの『自らがロールモデルになればいい』という発想に、価値観が変わりました。これまで、私は自分に似たバックグラウンドの人を探して、それを目標にしてきました。自分が新しい道を切り開いてロールモデルになる、という勇気はなかったんです」
卒業後の進路に悩んでいたときも、クリスさんはこんなアドバイスをくれた。
「マリコが本当にやりたいことは何なの? 前例がないからって、あきらめちゃダメだよ」
清水さんは卒業後、海外で経営コンサルティングの仕事をやりたいと考えていた。しかし、言葉の問題や、受け入れ側のニーズの問題を考えて、有名なコンサルティング会社の東京オフィスの面接を受けていたのだという。
クリスさんに励まされた清水さんは、東京での選考を途中で辞退。インドネシア・ジャカルタオフィスの面接に挑戦することにした。幼い頃、東南アジアに住んでいたこと、親しい友人がいること、そして市場の成長で、日本企業の案件が増えたこと、などが決め手となり、ジャカルタオフィスに目標を定め、内定を勝ち取った。
「私がジャカルタオフィスの日本人第1号らしいのですが、逆にやりがいを感じています。私がこれからコンサルティング会社の新興国オフィスで働く、日本人のロールモデルになれるのですから」
今なら、同級生と帆船で無人島へ行っても、立派に船長役を務められる自信があると言う清水さん。ダートマス・タックでの留学生活は、27歳の日本人女性をたくましいリーダーへと成長させたようだ。
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