夏野剛(下)「敵がいないヤツは何も決められない」 株主は企業経営者を甘やかしすぎだ
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――今、行き詰まっている組織は、どうしたらいいでしょうか。
選択肢は2つしかない。でないと組織の存続が危うくなる。まず一つ目は、みずからがちゃんと変える。キチンとしたリーダーシップを持った人をトップに据えるという意味です。選ぶべきは、意見がはっきりしていて、右か左かをはっきり言う人。社内のみんなが「この人がいいんじゃない?」という人ではない。社内のみんなが「この人がいい」というのは、脅威にならない。みんなにとって脅威にならないのは、何も決められない人なんです。
日本の会社、とくに大企業の場合は、「敵がいない」のが、トップに立ついちばん大事な条件ですよね。でも、そういう人は、トップに立ってみると、みんなに気を遣いすぎて何も打ち出せない。だから、「右か左か」をはっきりという言うリーダーが必要です。右に行って必ず成功するかどうかは分かりません。でも、どっちつかずだと必ず滅亡する。
右か左か。真ん中はない
――どちらかには行かなければならない。
そう。それを判断しなければならない。右か左か。間を取って真ん中はない。
――日本企業は何も決められない人が、意外と出世してきましたよね。
今まではね。それで企業の体力が弱くなった。ここでみずからが変えられるか。これは株主の責任もあると思います。たとえば役員が全員、同じ釜の飯を30年食ってきた人間で構成されている会社は、危ない、と思うべきなんです。株式公開企業でこれほど社外取締役が少ないのは日本ぐらい。他の血が入ると何を言われるか分からないから。イヤなワケですよ。コントロールできない。
これを自助努力で変えられるか。自助努力というのは会社も、労働組合も含めて。たとえば、50代の雇用を守るために新卒採用を抑制しているワケです。30年後の企業のあり方にものすごく脅威を与えているんだけども、30年後に会社がなくなってもいいと思っているワケでしょ。これはもうメチャクチャですよ。
会社っていうのはゴーイングコンサーンで未来永劫続くように経営するのが当たり前というのが、企業体のポリシー。セオリーですよ。企業経営の基礎の基礎。それを半ば捨てようとしている。自分たちの既得権益を守るため。職を守るため。どうしようもない。社会主義的な発想です。こういうのも含めて直していけるか。