夏野剛(下)「敵がいないヤツは何も決められない」 株主は企業経営者を甘やかしすぎだ
――なぜでしょう?
ゆとりで負担が少なくなったから、サッカーやスケートなどで世界的に活躍する選手が日本の若者からたくさん生まれたと思うからです。スポーツで世界の一流選手になろうと思ったら、勉強なんかしていられない。ゆとりじゃなきゃ無理ですよ。それを、ゆとり教育を見直して平均点が上がっても、ほとんど意味がない。
いま数学の能力が、等しく全員に必要でしょうか。表計算ソフトですべて計算できるじゃないですか。もちろん、極めるヤツは極めさせればいい。数学オリンピックは依然として日本の子供は強い。そういうヤツにやらせばいい。ゴルフもやりたいヤツにやらせればいい。突き詰めたいことがある人にやらせる。その多様性を育む教育システムにしなければならないんです。それなのに昔の富国強兵みたいに平均点を高めるなんていうことの議論は、先進国である日本でやることに意味がない。
組織に依存する人生はリスクが高い
――ダメな組織にいる個人はどうしたらいいですか。
会社が潰れるかもしれない。潰れたら飛び出ないといけない。だからいつでも飛び出せるように準備するというのは鉄則。するかしないかは考えたらいい。ただ、いま自分の会社が潰れたら食っていけるかっていうのも、リスクとして常に考えないといけない。未来永劫もつ会社なんていうのはもともと幻想なんです。組織に依存してはダメ。組織に依存する人生は極めてリスクが高い。リーダーが間違えると絶滅しますから。
――年功序列が色濃く残った会社が多く、若い世代には、閉塞感もある。
飛び出ればいい。
――夏野さんご自身の話をお伺いさせてください。夏野さんはドコモを辞めてから、ドワンゴでニコニコ動画の黒字化担当を務めていますね。
僕がドワンゴに来るまでは、ニコニコはとにかくユーザー拡大を優先していましたが、まずは黒字化しないと、キチンとしたサービスとして永続性がなくなります。赤字を流しているサービスは、ユーザーのためにボランティアをやっているようなもので、長続きしない。価値を創造するなら、それがキチンと永続的に回るようなビジネスモデルをセットするというのは経営者としていちばん大事なことで、それをやっているワケです。
僕は新しいサービスをつくることをずっとやってきた。それも、キチンとビジネスモデルを回さないと、新しいサービスをつくったことにならない。趣味になっちゃう。それとニコニコは、若者だけにウケていたので、僕は黒字化とともに一般化と国際化を目指している。国際化はまだできていませんが、一般化は、企業がニコニコ動画の中に、チャンネルをつくるというスキームを使って、それが成果を挙げている。有料ブログのブロマガも成長しています。