夏野剛(下)「敵がいないヤツは何も決められない」 株主は企業経営者を甘やかしすぎだ
――直せなかったら?
その場合はもう一つのオプションがあります。日本はそれでも企業に内部留保がたくさんある。上場企業の株価も、直近は回復してきていますが、ついこの前までは東証1部上場企業の3分の1以上が、純資産を下回る時価総額だったワケですね。となれば、自ら変革できなくて株価が低い企業は買われます。
日本の企業はリーダーがダメでも、現場の技術者はきわめて優秀。だから韓国の企業とかが、高給でヘッドハンティングしているような例がある。おカネと人材と技術力があるワケです。これは経営の3種の神器なんですね。それを生かすリーダーがいないと、間違いなく買われる。中国をはじめ東南アジアなど新興国の企業はのどから手が出るほど、日本の技術が欲しい。
――変われない会社は、買われてしまうしかない?
買われたほうがいいかもしれない。日本をベースに仕事しますから、雇用も守られますし、しかもその会社の技術力は生かされる可能性が高い。(今の日本の電機メーカーの不振が)もっとひどいことになったら「iPhone」「iPad」の技術を、日本に依存している米アップルは買ってくると思いますよ。アップルの時価総額を考えれば、こっち側(買収される側)の株主にとっても、アップルの株と交換されるならそのほうがいいじゃないですか。
――それ以外の方法は?
ない。自分で「変わる」か「買われる」か「滅びる」か。3つしかない。
――最悪は滅びる。
リーダーとともに組織は滅びる。サヨナラです。でもそんな組織は山ほどあったでしょう。でもリーダーを替えたら復活したでしょう。最悪なのは、リーダーが退かないで、雇用を切るケースです。いちばん最初に辞めないといけないのは、過去の経営者なのに相談役とかで残って、影響力を発揮していることがある。そういう人がまず去らないといけない。自分たちの責任ですから。
次のリーダーを選び間違えたら?
――ただ、リーダーが替わるといっても次のトップを決めるのが、今の社長だったりしますよね。ちゃんとした人を選べないケースはありうる話です。
その場合も滅びる。