「許された危険」は高齢化時代に様変わりする 認知症患者の事故に、受験生が学ぶべきこと

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高齢化社会に関する問題は、医学部入試で必ず問われるテーマです(写真:bee / PIXTA)

2016年に実施されている医学部入試の様相を概観すると、1次筆記試験の難度が増しているのは言うまでもなく、一方、2次試験では学生の人物を精査するという傾向が顕著になっているように思う。教え子からの情報によると、面接時間は総じて長くなり、やや圧迫気味の類も多いようだ。

そこで今回は、私が作成した以下の医学部2次試験「予想問題」を題材にしてみたい。以下の予想問題は、3月1日に出た「認知症の高齢者が起こした事故の責任を、家族が必ず負うわけではない」とする最高裁の判断を参考に作成している。

<問題>
ある地区でのできごとである。91歳の認知症に罹患した男性が、家族が目を離したすきに徘徊し駅のホームから線路に降り、運行中の列車に衝突して死亡した。
この事故で鉄道会社は列車に遅れが生じるなど損害が発生したとして、同居する高齢の妻と遠方で暮らす長男を相手どり、損害賠償を請求した。
男性の妻と長男は損害を賠償すべきか。あなたはどう考えるか。

 見られるのは2つのポイント

この連載の過去記事はこちら

これは私が「今年の2次試験の小論文や面接・集団討論で必ず出題される」と、さんざん注意喚起してきた重要テーマである。まだこの論点が出題されたとの報告はないが、私はこの問題こそ、医学部入試で問われる問題として良問だと感じている。なぜなら、ここには入試問題としての価値を超えた、2つのポイントが潜んでいるからである。

まずひとつは「高齢化社会と認知症患者増加の問題」である。言い換えるなら、2025年に認知症患者が700万人を突破すると予想される日本社会の実状を、受験生がどう考えるか。この視点が問われるだろう。

そしてもう一点、「医師に必要な能力としての、利益衡量の問題」が問われていると考える。利益衡量については、この連載の第18回「謎の小論文があぶり出す受験生の“本性”」の回で触れているが、これはさまざまな価値の衝突を比較・調整し、妥当な結論を導く能力のことである。

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