100人と太った1人、どちらの命が「重い」のか 医師に必要な「2つの能力」が問われる難問

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命の重さを問う難問。医学部入試で出題されたら、どんな風に回答すべきでしょう?(写真:eugenesergeev / PIXTA)
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私立医学部の入試が近づいてきた。医学部入試といえば学力偏重の反省からか、最近2次試験が重視される傾向にある。その影響だろうか、医学部2次(小論文、面接、集団討論)対策の需要が、私の周りでも急速に高まりつつある。

医学部の2次試験の重要性については、先日上梓した「わが子を医学部に入れる」(祥伝社新書)でも詳しく述べたが、今回はその医学部2次試験で受験生に必要とされる能力・資質について、少し突っ込んだお話しをしてみたいと思う。

少数を犠牲に多数を救うのは、正しい行為?

まず、以下の2つの例題について考えてみてほしい。

〈例題1〉
ある急傾斜の路線区で、一輌の貨車が連結を離れ、100km/hを超える猛烈なスピードで駅に向かい突進している。その駅には200人以上の乗客を乗せた電車が停車している。暴走する貨車がそのまま突進すれば、電車にもろに衝突して100人もの犠牲者を出すことが予想された。
この時、迫りくる緊急事態に気づいた転轍手が瞬時の判断で転轍をして、貨車を引込線に引き入れた。その結果、引込線で作業をしていた2人の作業員に貨車が衝突し、転轍手が予見したとおり2人の作業員は死亡した。転轍手のこの行為は許されるか。
〈例題2〉
あなたは鉄道線路をまたぐ跨線橋(こせんきょう)に立っている。下の線路を見下ろすと、〈例題1〉と同一の暴走貨車が線路を猛スピードで疾走している。もし駅に停車する電車に衝突すれば、やはり100人もの犠牲者を出すことが予想される。
今、偶然、跨線橋にものすごく太った男がいて、手すりから身を乗り出すように暴走貨車を眺めている。この男を突き飛ばせば、彼は跨線橋から転落して眼下の線路に横たわるであろう。男は150キロほどの体重のため、その巨体に衝突した暴走貨車は激しく揺れるものの停止するはずだ。しかし、太った男は命を落とすことになる。
あなたは電車に乗る100人もの乗客の命を救助するために、この太った男を線路に突き落とすべきだろうか。

 

さあ、皆さんはどんな答えを出すだろう。先日、私はこの2つの例題を医学部志望の30人ほどの受験生に投げかけてみた。すると不思議なことに、答えに一定の方向性が生じたのである。

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