医学部入試の難化傾向が進んでいるせいか、医学部受験生を指導していてさまざまな難問に出くわすことがある。それは数学、英語、生物などの学科ばかりではない。というか、学科にはひとまず答えがあり、答えることのできない難問は稀少と言っていい。
クセモノは小論文・面接試験だ。そんな中、ひときわ私の印象に残る問題がある。それは、2次試験で出題された口述の問題である。
受験生6人を集め討論の場を設けたものの……
だれしも一瞬、フリーズしてしまうのではないか。これは医師として仕事を始めてから向き合うような問題だ。以前この問題について、学業の優秀な受験生6名を集め討論させたことがある。予想通り、その後の展開は深刻で、たいへん印象深いものになった。
まず質問が記されたA41枚の紙を皆に配布し、2分間考えさせた後、「さあ、それでは討論を始めてください」と水を向けてみた。ところが、3分ほどは誰も口を開かず、凍りついたような静寂が室内を支配したのである。
実のところ、私もこの難問に対する確かな答えを持ち合わせているわけではない。そこでその日の講義では、問題点を整理しつつ、次のようなプロセスで彼らに話をした。
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