約30年間この仕事に携わる中で、様々な受験生を目にして来た。特に医学部受験生について言えば、前回も紹介したように、長く浪人している子どもと現役でさっさと合格していく子どもには、大きな違いが見られる。
端的に言えば、「物事をよく観察し、自分の頭でよく考えているか否か」という点で、両者には大きな差があるのである。
「なんだそんな簡単なことか」と思われるかもしれない。しかし、「物事をよく観察し、自分の頭でよく考える」というこの本質的な行為は、なかなかどうして難しい。簡単にできるようで、子どもの頃から習慣づいていないと、なかなかできることではないのである。
指示されたことをどう整理するか
残念なことに現状「できない子」に類型される子どもたちには、「問題文で与えられた条件を効率よく整理すること」を、具体的に学ばせる必要がある。何をどうやるのか、医学部の英語の問題でそれを見てみよう。
【問】次の英文を読み、与えられている表を用いて問題に答えなさい。
Six students of foreign languages, Ana, Betsy, Chang, Debby, Edmund and Fumi, are seated together. They do not all speak the same language, but enough of them speak the same languages that they can translate for each other.
・Ana and Debby speak only English, French and Spanish.
・Betsy speaks only English, French and Japanese.
・Chang speaks only Chinese and Spanish.
・Edmund speaks only Spanish.
・Fumi speaks only Japanese.
If Chang and Fumi wish to talk to each other, what is the fewest number of translators they would need?
本問は聖マリアンナ医科大学の過去問で、私のほうで問いの一部を省略し改題している。訳は、だいたい以下の通りである。
アナ、ベッツィ、チャン、デヴィ、エドモンド、それにフミの6人の外国語を話す学生が集まっている。彼らは全員が同じ言語を話すものではない。しかし、彼らの話す言語は通訳を介すればお互いの会話が十分に可能である。
・アナとデヴイは英語、フランス語、スペイン語のみ話す
・ベッツィは英語、フランス語、日本語のみ話す
・チャンは中国語とスペイン語のみ話す
・エドモンドはスペイン語のみ話す
・フミは日本語のみ話す」
もしチャンとフミが会話を望んだ場合、2人には最低何人の通訳が必要か?
最近は医学部入試もアメリカのMCAT(医学部入学資格試験)の影響を受け、論理力や判断推理力を試すような問題が出題され始めており、この問題もその一例と言える。
さて、この問題で与えられている表を正しく埋めるとすれば、この図のようになるだろう。
しかし、筋のいい「できる子」に本問を解くよう指示すると、問題文に与えられた表ではなく、独自に別の表をササッと作る傾向があるのである。これには驚いた。
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