先週紹介した「コートの男」に続き、もう一題、順天堂大学医学部の「写真で出題される」小論文試験問題の内容を再考してみたい。今回の写真はこれだ。右側に森林が長く連なり、左側に海が広がる。遠くのほうには、日が差しているのが見える。そして問いが以下のように続く。
「写真は下記の言葉を添えて出版されています。詩の内容をふまえて、あなたが海辺に腰かけて思うことを600字以内で述べなさい。The sea belongs to whoever sits by the shore」
英文をおおまかに意訳すると「浜辺に座る者が誰であろうと、海は寄り添ってくれる」という具合に解釈できよう。
「海が寄り添ってくれる」をどう解釈する?
さて、これで何を書くか。いや、何が書けるのか。写真を見て私が瞬間にひらめいたテーマは、2つある。1つめは、学生時代に接したニュートンが記した英文に関することである。
著名なニュートンの名言は、未発見の自然科学上の真理を眼前の大海原にたとえたものであり、写真の内容と符合する。医学も自然科学の一類型である以上、このアプローチはありだと思う。
しかしながら、“海が寄り添ってくれる”という和訳と小論文の方向性は微妙にズレているのである。そこで考えられるもう1つのアプローチが、現在声高に主張され始めた「寄り添う医療」という観点である。
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