30年以上にわたる受験指導の過程で、私はさまざまな体験をしてきました。その中で特に印象的なのは、やはり入試直前の子どもたちの様子です。センター試験を直前に控えた時期や、私立医学部入試の口火が切られる直前、彼らの様子には大きく3つのパターンがありました。
1つは現役、あるいは浪人年数がまだ浅く、勢いがあり、模試の成果も出ている生徒の有り様です。この類型の生徒の場合、決戦の日が近付くにつれ、むしろ良い顔つきになり、表情が落ち着いていく傾向があります。
彼らは多くを語らず、学習上自らが抱えている障害を、一つ一つ治療するように取り除いていきます。入試日までの期間、講師に継続的に質問し問題解決を図り、本番に向け頭をならしていきます。この類型に属する生徒は、何事もなければおおむね合格していきます。
多浪生にありがちな2つのパターン
これと対極に位置する浪人年数の長い生徒たちは、さらに2つに類型化されます。そのうちの1つが最も厄介なパターン。予備校にまったく来なくなる「失踪型」です。予備校に来なくとも家で勉強を進めていればよいのですが、どうもそういう風でもありません。
また、よしんば来校したとしても、寡黙で元気がなく、表情は不安で一杯です。情緒も不安定で、教師を避けるような行動に出る生徒もいます。このケースは非常にシリアスで、多くの教員が頭を抱え込みます。
一方、同じ多浪生でも多浪であることをある種「達観」し、独特の境地に到達している一群がいます。彼らの特徴は、それなりに実力を備えている点です。努力を積み上げてきているので力はあります。いわば、不運にも結果が出ていないだけで、合格の可能性を大いにはらんでいる集団です。
ただ、「落ち癖」がついている彼らは、人生に対して疑心暗鬼になっています。こここそが、彼らへの対処の難しさです。
私が特に着目しているのも、この救える可能性の大きい一群なのです。彼らは単に、本番に弱いだけ。誰かが背中を強く押しさえしてあげれば、不合格者から、一転、合格者になりうるのです。
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