1月16、17日にセンター試験が実施された。予備校各社の考察が続々出ている中、今回取り上げたいのは「生物」の試験。内容は昨年と比べかなり易化しているが、興味深い傾向が見られたのだ。
結論から言うと、今回の試験では「知識」よりむしろ、「推理力」や「比較力」に焦点をあてた問題が目立ったのである。早速問題を見てみたい。取り上げるのは、生物の第5問・問2だ。
生物の知識はほとんど必要ない
第5問
生物は自然環境の影響を受けつつ多様な進化を遂げてきた。このうち、生物が様々な環境の下で異なる形態や機能をもつようになり、共通祖先から短期間のうちに多様な種に分化すること適応放散という。例えば、ガラパゴス諸島に生息するフィンチは、それぞれの餌環境に応じて(a)くちばしの形を様々に変化させてきた。
下線部(a)に関連して、ある鳥類の種Aと種Bは進化の過程で、くちばしの形が図1に示したように変化した。これらの種の間では、遺伝子Xと遺伝子Yの発現量が異なることが知られている。ニワトリの胚の、将来くちばしとなる部分において、これらの遺伝子の発現量を実験的に増加させたところ、次の図2に示す結果が得られた。この結果から導かれる考察として適当なものを、下の①~⑧のうちから二つ選べ。
① 遺伝子Xと遺伝子Yは、ともにくちばしの太さを増加させる。
② 遺伝子Xはくちばしの長さを増加させるが、遺伝子Yはその効果を抑制する働きがある。
③ 遺伝子Xはくちばしの太さに影響しないが、遺伝子Yはくちばしの太さに影響する。
④ 遺伝子Xはくちばしの長さに影響しないが、遺伝子Yはくちばしの長さに影響する。
⑤ 共通祖先から種Aへのくちばしの形の進化には、遺伝子Xの発現量の変化が関わっているが、遺伝子Yの発現量の変化は関わっていない。
⑥ 共通祖先から種Aへのくちばしの形の進化には、遺伝子Xおよび遺伝子Yの発現量の変化が関わっている。
⑦ 共通祖先から種Bへのくちばしの形の進化には、遺伝子Xの発現量の変化が関わっているが、遺伝子Yの発現量の変化は関わっていない。
⑧ 共通祖先から種Bへのくちばしの形の進化には、遺伝子Xおよび遺伝子Yの発現量の変化が関わっている。
※一部改題
図1の種A、種Bを見ると、生物の参考書に掲載されているダーウィンフィンチの顔つきそのものである。だが、頻出のガラパゴス諸島の進化の知識問題かと思いきや、そうではない。問1で問われている生物用語はさておき、問2は生物の知識がほとんど必要ない問題なのである。
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