激変!センター試験は「推理力」で制す時代に 「知識ゼロ」でも解ける?生物の問題を検証

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さて、以上に整理した情報より抽出される中心的な命題は、遺伝子Xはくちばしの長さ、遺伝子Yは太さの制御に関係し、そしてXとYは互いに影響を及ぼさない(少なくとも本問においては)、という結論である。

種A、種Bのくちばしの形状について少し触れると、種Aではくちばしが太く変化しており、長さは変っていないため、遺伝子Yだけの発現量が変化していると考えられる。一方、種Bではくちばしが短く変化し、太さは変わっていないため、遺伝子Xだけの発現量が変化していると考えられる。

ただ、遺伝子Xはくちばしを「長くする」遺伝子であるから、種Bのケースでは遺伝子Xの発現量が減少したと考えねばならないだろう。

見られているのは問題解決力

以上の分析から選択肢で合致するのは、

③ 遺伝子Xはくちばしの太さに影響しないが、遺伝子Yはくちばしの太さに影響する。

➆ 共通祖先から種Bへのくちばしの形の進化には、遺伝子Xの発現量の変化が関わっているが、遺伝子Yの発現量の変化は関わっていない。

この2つである。

与えられた図で対照と変化を加えた実験群を、それぞれ比較・分析し推理力を駆使すれば、答えはすんなり出てしまう。前述の通り、これにはほとんど生物の知識はいらない。

だが、この問題を解くには推理力・比較力を含めた思考力が肝要であるから、その点では意味がある。こういった能力が重視される傾向は、今後ますます強まっていく可能性がある。

遭遇した出来事に対し、自力で解決していく力がどのぐらい備わっているか――。そういう根本的な部分を見る意図があるのだろう。

このほかにも、医学部入試に関する情報を小林公夫オフィシャルサイトにて紹介しております。ぜひ、併せてご覧ください。

 

小林 公夫 一橋大学博士、作家

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こばやし きみお / Kimio Kobayashi

専門は医学と法、生命倫理学。現在は生殖医療や実験的治療行為など先端医療の研究に従事している。研究の傍ら、医学部受験生の指導にあたり、医学部受験予備校インテグラ、医学部&東大専門塾クエストで、医学概論、医学部生物学、医学部小論文・面接などを指導。著書多数。代表作にシリーズ累計21万部突破の『「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法』『新「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法』「オトバンクFeBe版勉強しろと言わずに子供を勉強させる法」(PHP研究所)、『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)などがある。『医学部の面接 [3訂版](赤本メディカルシリーズ)』、『医学部の実践小論文 [改訂版](赤本メディカルシリーズ)』(教学社)は医学部受験生のバイブル。医学部入試に関する情報はオフィシャルサイトにも掲載している。

 

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