日本のエリート教育を牛耳るたった2つの塾 「学歴」はもう古い!?「塾歴社会」化する日本
いよいよ中学受験の天王山を迎える。しかし、その合格発表の直後から、「合格おめでとう! 次は東大だ!」というパンフレットが配布され、6年後の大学受験に向けての攻防が始まることをご存じだろうか。
高橋康志さん(仮名)の息子・道正くん(仮名)は、第1志望だった駒場東邦(以下、駒東)に合格した。2015年の東大合格者数82名。開成、筑波大附属駒場(以下、筑駒)、灘、麻布に次ぐ全国5位。押しも押されもしない中学受験の超人気進学校だ。
塾の送り迎えはもちろん、塾がない日は高橋さんが家で勉強を見た。入試直前から当日の約2週間、高橋さんは会社を休んだ。親子ともに、昼も夜もなく週末もなく総力で臨み、つかんだ合格だった。
合格を確認して最初にしたことは、大学受験塾「鉄緑会」への入塾手続きだった。合格直後のこのタイミングなら、駒場東邦の生徒は「入会選抜試験(以下、入会テスト)」が免除される。駒場東邦は、たった13校しかない「指定校」の1つだからだ。
小学校を卒業し、中学校入学までのちょうど春休みに当たるころ、私は高橋さんと食事をした。親子で臨んだ中学受験について、これからの6年間への期待と不安について、話を聞いた。高橋さんは、気取ることなく、包み隠さず、「現実」を話してくれた。
人気進学校に合格しても、受験勉強は終わらない
息子が超人気進学校に合格したからといって、嫌みや驕りはみじんも感じられない。まるで「ドタバタ劇」のように話してくれるが、当時は真剣そのものだったに違いない。
途中、高橋さんの携帯電話が鳴った。「とりあえず今日は単語を覚えなさい。数学は、まだ残ってたっけ? じゃ、それもだね。頑張ってね」と応じる。息子さんからだった。
「塾の春期講習の宿題をどこまでやればいいか、確認の電話でした」。高橋さんはちょっと恥ずかしそうに笑いながら携帯電話をかばんにしまう。中学受験が終わって息つく暇もなく、6年後に向けての受験勉強が始まっているのである。高橋さん親子だけではない。道正くんは、春期講習の初日だけで、サピックスの同じ校舎の友達10人と出くわしたという。ほとんどが「α」と呼ばれる最上位クラスの生徒たちで、開成、筑駒、桜蔭など最難関校に合格していた。
同じ中学受験塾でしのぎを削り合った最上位クラスの卒業生たちが、思い思いの中高一貫校に合格していく。しかしそれからたった6〜7週間後、再び同じ塾で出会い、「東大」という同じ目標に向かってともに学び始めるのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら