さあ、問題に戻ろう。皆さんならどうお答えになるか。受験生(高校生・浪人生)のレベルで考慮しなければならないポイントは、大きく3つあるだろう。問題を複雑化させないため、ここでは認知症男性に対する家族の関わりの程度については、考慮しないでおくことにする。
そのうえで考えてみると、まず、①この認知症男性の妻と長男には、認知症男性を監督する義務があったのか。そして、もし義務があったとして、②四六時中、家族は認知症患者を監視し続け、いかなる事故もゼロにするべく努力しなければならないのか。
さらに、見落としがちな点であるが、③もし今回の最高裁判決のように、妻と長男に賠償責任がないとされた場合、では、その発生した損害は誰が負担するべきなのか。言い換えれば、ほかに誰か損害を補てんしてくれる人がいるのか、である。
難関大ほど「あちらを立てれば、こちらが立たず」
以上3点を挙げたが、受験生は医学や法学の専門家ではないので、専門的に答える必要はない。いわば、素人の観点から、しかしよく練られ、考えられた答えを出せばいいのである。
私は今年の1月末に、指導している学生数十人にこの質問を投げかけてみた。すると、私の目から見て優秀な受験生は、一様に次のような回答をした。
受験生のレベルで言うと、この回答はかなり出来のいいほうであろう。私はよく、難関大の入試になればなるほど「あちらを立てれば、こちらが立たず」という性質のテーマが問われると助言している。本問もその例外ではない。
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