中国で旧日本軍《731部隊》題材の映画が公開…反日感情への影響は?「被害者意識」について北京の"政府系機関紙"編集者と議論してみた
「その少年を憎むのではなく、戦争さえなかったら、こうした悲劇は起きなかった」――嵩の心の声が、聞こえてくるようだった。
主人公は、「食べ物を分け合う」と「逆転しない正義を探す」を生涯の信念とした。その姿は、戦争の記憶を超えていくための道しるべとなる。空腹の時に得たたまごは、ただの食べ物ではなく、人と人を結ぶ象徴であり、言葉にできない痛みを包み込む優しさそのものだ。
『あんぱん』が示したように、憎しみではなく分かち合いを、分断ではなく希望を描くことこそが、日中戦争映画の和解への第一歩なのかもしれない。
私は先述の女性編集者に『あんぱん』を強く薦めた。すると彼女はしばらく黙った後、「観る機会があればいい」と言った……。
「敵だった僕らが、友になるまで」そんな物語を望む
中国の古典詩に「冤冤相报何时了」(復讐と恨みの連鎖は、いつ終わるのか)という言葉がある。過去の痛みを忘れずとも、互いに許し合う道を探すことが大事だ。
中国のメディアは、旧日本軍の元兵士が高齢になって中国で謝罪する様子をよく報じている。今年8月、94歳の元兵士がハルビンの731部隊跡地を訪れ、「謝罪と不戦平和の碑」の前で合掌し、深く頭を垂れた。彼は、731部隊の少年兵として従軍した過去を悔い、中国の人々に懺悔の思いを伝えたという。
20年前の2005年、91歳の旧日本軍兵士が北京の盧溝橋でひざまずき、中国の人々に謝罪した。その姿は今も広く知られている。
しかし、筆者は心から思う。高齢の元兵士たちは、これ以上謝罪やひざまずくことで自身を責め続ける必要はない。大切なのは、同じ時代を戦い、いま同じように歳を重ねた中国の元軍人と向き合い、手を取り合って微笑むことではないだろうか。
「敵だった僕らが、友になるまで」――そんな物語の映画を観たい。
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