江戸時代に御法度だったのはよく聞くけれど… 昔の日本で「肉食」が《1200年もの間》禁止されていた"実は合理的な理由"

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牛鍋
明治時代の牛鍋を再現した料理。明治維新で解禁されたのは有名ですが、それまでの1200年間、日本では牛肉食が禁止されていました(写真:ウサネコ/PIXTA)
今からおよそ200万年前、西アジアに生息していたオーロックスという動物が、現在の牛のルーツだとされています。フランス南西部のラスコー洞窟には、1万5000年も前に描かれたとされる壁画があり、そこには人々がオーロックスを狩猟している様子が鮮明に残されています。つまり、人類はすでにその遠い昔から、牛肉を食料としていたのです。
しかし、そこから今日のように、日本で牛肉が日常的に食べられるようになるまでには、じつに波瀾万丈の歴史がありました。本稿では、そんな牛と日本人の物語をひもといていきます。
「歴史」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、明日、誰かにちょっと語れるような面白いネタを厳選しました。肩の力を抜き、気軽に読み進めてみてください(小関尚紀著『知ればもっと美味しくなる! 大人の「牛肉」教養』から一部抜粋、編集してお届けします)。

まさかの「お肉禁止令」が発令!

日本に牛肉を食べる文化が伝わった時期には諸説ありますが、4世紀末から5世紀頃(古墳時代)だとする説が有力です。この頃、朝鮮半島からの渡来人が牛を日本に連れてきた際、牛肉を食べる習慣も持ち込んだと考えられています。

その後、牛は農耕や運搬などのための労働力として、また乳や皮を利用するための家畜として、日本全国で広く飼われるようになりました。

特に飛鳥時代や奈良時代には、牛の利用が広まります。実際、牛乳を固めて作った「蘇(そ)」(現代のチーズのようなもの)や、天皇の靴の材料となる牛の皮が、現在の兵庫県北部にあたる但馬国から朝廷へ納められていた記録も残っています。このように、牛は庶民にとっても貴族にとっても、身近な存在になっていったのです。

しかし、不思議なことに、この頃から牛肉を「食べる」文化は次第に薄れていきました。一体なぜでしょうか? その大きな理由は、仏教の影響によるものです。

次ページ仏教の教えという理由は表向き?
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