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「過疎自治体」を喰らうコンサル、ふるさと納税は見直しが必要だ/『過疎ビジネス』横山勲氏に聞く

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『過疎ビジネス』著者の横山 勲氏
[著者プロフィル]横山 勲(よこやま・つとむ)/河北新報編集部記者。1988年生まれ。「『企業版ふるさと納税』の寄付金還流疑惑に関する一連の報道」で第29回新聞労連ジャーナリズム大賞受賞、第5回調査報道大賞優秀賞を受賞。取材班として携わった連載「原発漂流」を含む特集「東日本大震災10年」は2021年度新聞協会賞受賞(撮影:今 祥雄)
福島県北部の国見町。過疎化が進むこの町で、企業版ふるさと納税制度を使って寄付をした企業グループが、寄付金を財源とした事業を受託し利益を囲い込む、「寄付金還流」が起きていた。仙台に本拠を置く河北新報の記者が、その実態を調査報道で明らかにした。
過疎ビジネス (集英社新書)
『過疎ビジネス (集英社新書)』(横山 勲 著/集英社新書/1100円/280ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──財政力の弱い自治体が狙われました。

地方創生コンサル・ワンテーブル(宮城県)の島田昌幸前社長は、総務省の地域力創造アドバイザーという肩書を使って自治体関係者を信用させていた。

だが裏では「行政機能を分捕る」「(地方議員は)雑魚」と言い放ち、公金を食い物にしていた。

──発端は町の大型事業でした。

事業は、企業版ふるさと納税で匿名企業3社から寄付された4億3200万円を財源に高規格救急車を12台購入し、自分たちの町では使わずほかの自治体にリースするという不可解なものだった。

この事業はワンテーブルが1社のみの応募で受託。提携していた救急車ベンチャーのベルリング(東京都)が車体製造を担った。財源は企業版ふるさと納税による匿名寄付だったが、実は寄付をしていたのはほかならぬベルリングの親会社DMM.comと、そのグループ2社だった。

企業版ふるさと納税は寄付額の最大9割が還付される。親会社のDMMは寄付金の大部分を回収でき、子会社のベルリングはワンテーブルから車両製造を受注することで利益を上げられる。ワンテーブルには自治体からコンサルフィーが入り、救急車のリース事業でさらに利益を出せる。これが企業版ふるさと納税制度を使った寄付金還流の実態だった。

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