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戦前の秩序に逆戻り…日本は戦争犯罪やジェノサイド犯罪に対する法整備を/『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』赤根智子氏に聞く

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『戦争犯罪と闘う国際刑事裁判所は屈しない』著者の赤根智子氏
赤根智子(あかね・ともこ)/国際刑事裁判所(ICC)所長。1956年愛知県名古屋市生まれ。80年東京大学法学部卒業。82年検事任官。法務省法務総合研究所所長、最高検察庁検事などを歴任。2018年国際刑事裁判所判事。24年3月から現職。(撮影:尾形文繁)
ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルによるガザへの攻撃は、国際社会の無力さを浮き彫りにした。国際刑事裁判所(International Criminal Court、ICC)の裁判官としてロシアのプーチン大統領に逮捕状を出し、ロシア当局から指名手配を受けた赤根智子氏。今、日本人初の所長として、米トランプ政権の制裁によって存亡の危機に立たされたICCを守ることの重大さを訴える。

世界におけるICCの役割

戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない (文春新書 1496)
『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない (文春新書 1496)』(赤根智子 著/文春新書/1045円/224ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──ICCは、2023年3月にはプーチン大統領に、24年11月にはイスラエルのネタニヤフ首相に、戦争犯罪などの容疑で逮捕状を出しました。

ICCの仕事は、戦争犯罪や人道に対する犯罪などを犯した個人を国際法にのっとって裁くことだ。どのような状況でも、法と証拠のみに基づき判断を下す。政治的な配慮はなく、特定の国やグループを敵視しているわけでもない。

マルチラテラル(多国間主義的)な国際機関や組織が機能しにくい中で、ICCは世界における「法の支配」の最後の砦として機能している。そのことは人類の希望にもなっている。

──ただ、ネタニヤフ首相への逮捕状発付に反発したトランプ政権が、検察官や裁判官らICC関係者への制裁を行っています。

最初に制裁対象となった検察局トップ、カーン主任検察官は米国への入国ができなくなった。オランダ以外の銀行口座も使えない。検察局の捜査にも多大な影響が出ている。追加制裁を受けた裁判官らの場合も制裁内容はほぼ同じだ。

二次的な制裁対象になることを恐れ、ICCとの取引を停止する企業も出始めている。さらに制裁を認めた大統領令はいつでも一方的に対象範囲を広くできる内容だ。

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