中国で旧日本軍《731部隊》題材の映画が公開…反日感情への影響は?「被害者意識」について北京の"政府系機関紙"編集者と議論してみた
彼女の論点に対して、私は自分なりに考えを整理し、次のようにまとめた。相手を批判するのではなく、あくまで対話と交流を望んでいる。
日本の戦争映画やドラマは、原爆投下や空襲といった出来事に代表されるように、自国民が戦争によって被った苦しみに焦点を当てる傾向が強い。そこには加害責任よりも被害場面が前面に出る構造がある。しかし同時に、「二度と戦争を繰り返してはならない」という強い平和へのメッセージも込められている。
日本の戦争映画は、アメリカとの激しい戦闘を題材にすることが多い。高畑勲監督の名作『火垂るの墓』(1988年)は、今年の8月15日に民放で再放送された。この作品を観てアメリカを憎む日本人はいないだろう。むしろ、「戦争と平和を深く考えさせる色あせない傑作」として広く評価されている。
中国の戦争映画やドラマは、日本軍の残虐性を強調したことが多い。その表現は、ときに「恨み」へと傾きかねない。
映像作品は、記憶と感情を紡ぐ芸術だ。戦争映画やドラマは、歴史の痛みと未来への希望を同時に宿す。しかし、その力がイデオロギーに絡め取られ、特定の憎悪や偏見を植えつける道具となれば、民族や人間の分断を生み出す。特に幼い心に「日本=加害者」という単純化された印象が刻まれれば、日中の未来を閉ざす危険がある。
筆者も幼少期に学校で「抗日の歌」を覚えた
私は子どものころ、学校でいくつかの「抗日の歌」を覚えた。なかでも『大刀向鬼子们的頭上砍去』という歌がある。「鬼子」とは日本兵のことだ。
今思えば、幼い心に「鬼を斬れ」と歌わせることは、憎しみを刷り込み、人間性を歪めかねない。今の子どもたちが幼稚園や小学校でその歌を歌わなくなることを願っている。
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