スズキ「初のEV」に滲む電動化戦略の悩ましさ/最後発のスズキが「e ビターラ」を出す深い意味/鈴木社長が語る"EV地獄"の勝算は?

「“EV(電気自動車)地獄”へようこそいらっしゃいました」
スズキがEV開発を決めた際に、鈴木俊宏社長がライバルメーカーからかけられたのはそんな言葉だったという。
アメリカのトランプ政権発足による環境規制の緩和もあり、足元のEV販売は世界的に成長が鈍化している。現状、巨額の開発費や電池コストがかかるEVは収益を出しにくく、売れば売るほど赤字、という状況に陥っているメーカーも少なくない。
そうした中、9月16日、スズキは初のEV「e ビターラ」を日本へ投入し、来年1月から販売すると発表した。「これを皮切りに、競争が激しいEV市場に参入していく」と鈴木社長は宣言した。
国内自動車大手で唯一EVを投入してこなかったスズキが、このタイミングでEV地獄に参入するのはなぜなのか。
インド、ヨーロッパで先行
e ビターラは新型のコンパクトSUV(スポーツ用多目的車)。インドの工場で生産し、世界100以上の国と地域へ輸出販売する世界戦略車に位置付ける。
7月からイギリスやノルウェーなどヨーロッパで受注を始め、8月にインドから出荷を開始した。e ビターラは先行するこの2市場が販売の主戦場となる。
ヨーロッパ市場のEV普及速度は国ごとに濃淡はあるものの、環境規制が年々厳しくなるためEV投入は不可欠。中国勢を含めて競争は激しいが、鈴木社長は受注動向について「EV第1弾としての印象はかなりいい」との手ごたえを示す。
インドの新車販売に占めるEV比率はまだわずかだが、深刻な大気汚染に悩まされているインド政府が電動化を積極的に推し進める政策を掲げている。地場メーカーのタタ・モーターズや中国上海汽車傘下のMGモーターなどが先行してEVの大衆モデルを投入している。
スズキはインドの乗用車市場で約4割のシェアを握っており、この動きを黙って見過ごすわけにはいかない。現地の若者に人気のSUVで出遅れていることから、EVのSUV投入で挽回を図る狙いもある。e ビターラは競合EVと同水準の月販2000台程度を目指すという。
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