
心地よいホスピタリティー
40分走ってようやく隣駅であるポロイ駅に着いた。まだスイッチバックがあるものの、列車は徐々にスピードを上げていく。建物が減り、窓の外には家畜らしき動物がちょくちょく現れる。

午前8時半を過ぎると日差しが車内に入り込み、気温の上昇を感じた。同時に高山病特有の息苦しさがスーッと消え、標高が下がったことが分かった。スマートウォッチで血中酸素を図ると、数字が改善していてほっとした。
スイッチバック中は休憩していた乗務員も仕事を始め、軽食を配り始めた。ルイスがコカ茶にお湯を注ぎながら「こんにちは。砂糖はいりますか」と日本語で聞いてくれる。


車内を流れる民族音楽のBGM、天窓越しに広がる真っ青な空。映画の中にいるような、あるいは大自然の中でティータイムを楽しんでいるような、不思議な没入感だった。
有名な景勝地が近づくと、スペイン語と英語でアナウンスが流れる。乗客が少なくて余裕があるのか、あるいは一人旅の筆者を気にしてくれるのか、その都度若い乗務員がやってきて、指をさして教えてくれる。
「あそこの山は、ここの人たちにとってとても神聖な存在なのです」
「見てください。杖を手に歩いている人がいるでしょう。4日かけてクスコからトレッキングしている旅行者たちです」
「4日も?」
「そう。あなたも挑戦してみますか」
空いているから、車内を歩いて反対側の窓から写真を撮るのも自由。サン・ペドロ発の列車はいつもこんな感じなのだろうか?

到着まであと1時間半のところで車内販売が始まった。ワゴンに乗っているビールやワインを見て「お酒は苦手」と首を振ると、ルイスが「ペルーに来たならインカコーラを飲まなければ」と言う。

ペルーの国民的炭酸飲料で、コカ・コーラもその牙城を崩せなかったというインカコーラ。黄色い液体の味は想像もできないが、そう言われたら買わないわけにはいかない。
コーラと引き換えにルイスにスマホを渡した。撮影後に画面を見せてもらうと、彼はカメラの設定をいじってポートレートモードで撮っていた。日本語読めないだろうに、操作も慣れている!
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