

AIより「自分の好奇心」頼み
マチュピチュのような「一生に一度」レベルの目的地に個人で行くときは、ブログやYouTube、ガイドブックの情報が頼りだ。最近は生成AIという強い味方もいる。
クスコからマチュピチュへの行き方も簡単に見つかるが、マチュピチュという目的地に到達するための「手段」としての情報、すなわち時間と予算、コスパとタイパという観点での紹介が多い。
筆者は弾丸旅行ではなく、貧乏旅行でもなく、時間と予算の両方である程度融通が利いたので、自身の好奇心を頼りに情報が少ないサン・ペドロ発の列車に乗った。
誰かと旅行に行くと、移動中はずっと喋っていて、乗り物は旅の脇役に、車内の食事や景色は旅のつまみになりがちだ。だが話し相手のいない一人旅は、移動の体験が旅全体の印象に大きな影響を及ぼすということを今回の世界一周で知った。
行きのペルーレイルで、ビスタドームとエクスペディションの差額は25ドル。窓の大きさやスナックの質の違いだけで測ると、たしかにもったいないと思ってしまう。一方で、その価格差に正当性を与える最も大きな要素は、乗務員のホスピタリティーであることもよく分かった。

行きの4時間半近い列車旅をちっとも長いと感じなかったのは、窓から見える景色の豊かさや列車のインテリアのすばらしさだけではないのだ。
日本は人手不足もあり、新幹線や特急列車から車内販売が消えつつある。エキナカのコンビニでコーヒーを買えるから別にいいやと思っていたが、人間のスタッフには移動の手段である乗り物を旅の主役に変える力がある。
日本に帰国してしばらく経ったある日、エキナカのカルディでインカコーラを見つけた。実は炭酸飲料は苦手だ。ペルーレイルに乗った時、乗務員のルイスが勧めなかったら、ペルーにいた2週間で口にすることはなかっただろう。
「ペルーに来たならインカコーラでしょう」。ルイスの言葉と、「コーラ」という名前にしては妙に甘いインカコーラの味わいを思い出し、コンドルが飛んでいくのイントロを再び口ずさんだ。
【前編はこちら】「世界遺産マチュピチュ」へ列車旅、生成AIのおすすめルートは無視!あえて「非効率な直通」列車を選んだ理由。《50代世界一周ひとり旅》

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら