日本の保育園はなぜ、「保育士"あと1人"」が足りないのか?「保育園事故」過去最多が示す悲惨な現場、劣悪な労働環境が抱える【深刻なジレンマ】

「子どもの発達に応じて丁寧にかかわる保育がしたいのに、それがなかなかできないのが辛いです」
東北地方の認可保育園で働く保育士の藤井美央さん(仮名、20代後半)が、切実に訴える。美央さんが受け持つ5歳児クラスには20人の子どもがいて、保育士2人で担任している。認可保育園など公的に認められた保育施設には保育士配置基準があり、基準より多い配置ではあるが「人手は全く足りません」(美央さん)と言う。
保育士の配置基準は国の政令で決められており、自治体は独自に配置基準を決めることができる。認可保育園について国の基準は、0歳の子ども3人に対して保育士1人(「3対1」、以下同)、1~2歳児は「6対1」、3歳児は「15対1」、4~5歳児は「25対1」となっている。
不十分な配置基準を補うと、園の人件費が「持ち出し」に
2021年から名古屋市の保育士や保護者らが中心となって「子どもたちにもう1人保育士を!」キャンペーンが行われるなど世論が後押ししたこともあり、2024年4月から76年ぶりに配置基準が改定された。3歳児は従来の「20対1」から「15対1」へ、4~5歳児は「30対1」から「25対1」に改善。さらに2025年4月からは、1歳児で「5対1」の手厚い配置にした場合は人件費が上乗せされるようになった。
とはいえ、「そもそもの配置基準が不十分」という現場の声は大きい。配置基準が改定されたといっても、戦後に決められた一部がようやく改定されたにすぎず、実際の保育園における保育士の配置は、基準以上になっているケースが多い。
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