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オルツの不正会計で再び注目、「粉飾決算の課徴金」は安すぎる? 600万円にとどまるケースが大半

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オルツ株は8月に上場廃止となった(オルツHPより)

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AI開発ベンチャー・オルツによる不正会計をめぐっては、東京地検特捜部だけでなく、“市場の番人”として株式市場の公正性を守る役割を担う証券取引等監視委員会も調査に乗り出していた。今回の監視委の告発によって事案の詳細がいっそう明らかになることが期待される一方、スタートアップを含めた上場企業の粉飾決算を防ぐ仕組み自体の限界を指摘する声も上がっている。

10月28日、監視委はオルツが上場前後に提出した有価証券届出書や有価証券報告書で架空の売上高を計上していたとして、法人としての同社と米倉千貴元社長を含む役員ら4人を、金融商品取引法違反(虚偽有価証券届出書等提出)の疑いで東京地方検察庁に刑事告発した。

監視委によると、同社は東証グロース市場上場に伴う株式売り出しの際、関東財務局に提出した有価証券届出書に記載した3年度分の損益計算書で、架空の売上高を上乗せしていたという。

事業年度ごとにみると、2022年12月期決算では実際の売上高の10.9倍に当たる26億6607万円、23年12月期は10.4倍の41億1199万円、24年12月期(中間決算)は5.7倍の28億4400万円となっていた。3年度分の合計では、約84億円が上乗せされていたことになる。

さらに、24年10月の上場後に提出した有価証券報告書にも虚偽記載が認められたという。調べによると同年12月期の決算では、実際の売上高の5.5倍に当たる60億5728万円と記載していた。

100億円を超える粉飾決算

監視委の告発は金商法違反の構成要件に関するルールに従い、上場時に提出が義務づけられている上場前3年分の損益計算書などの範囲に限定されている。

一方、第三者委員会がすでに公表している調査報告書では、今回、監視委が指摘したよりも広範囲にわたる虚偽記載について指摘。同社が広告代理店などを介した架空売買による循環取引を繰り返し、100億円を超える規模の粉飾を行っていたとしていた。

米倉氏が経理担当者らに対し、循環取引のスキームついて、「前向きな意見を出せる者以外」にその全容を伝えないよう情報管理を指示したとも指摘した。なお、同社は「関係当局による捜査に全面的に協力していく」とコメントしている。

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