
世界遺産マチュピチュの玄関口まで、クスコ市街から列車で向かうことを決めた筆者は、2024年10月31日早朝6時すぎ、キャリーケースをクスコのホステルに預け、リュック一つでサン・ペドロ駅に向かった。
この駅に列車が止まるのは1日数回だけで、見落としてしまいそうなほど地味なたたずまいだった。


標高3400メートルの高地にあるクスコの朝は、日本の真冬のような冷え込みだ。路上で年配の女性が「コーヒー」と話しかけてきたので買い求め、駅舎に入る。
列車のドア近くに立っていた乗務員にチケットとパスポートを見せると、同世代とおぼしき男性が「こんにちは。さなえ」と日本語であいさつしてくれた。
若い男性乗務員に先導され車内に。彼は窓枠に掲示された番号を指して「あなたが予約した座席はここだけど」と言った後に、「景色がいいこちらの席にどうぞ」と反対側の別の座席に座るよう促した。
日本語のあいさつと座席の配慮。発車前からこの鉄道旅がすばらしいものになる予感しかしない。

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