「日本初のタワマン」は意外にもさいたま市にあった...築約50年の「与野ハウス」が北与野にもたらした大きな変化と、住民たちの本音

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北与野駅周りも再開発が進んだ

「花はつ」を出て、北与野駅の周りを歩いてみた。ぐるりと見える範囲に何本か新しいタワマンが建っている。上野駅や東京駅まで1時間もかからないとあって、この地を選ぶ人が増えているのだろう。

さいたま市では、2014年に「市民と事業者及び行政が将来像を共有し、実現に向けて取り組むためのさいたま新都心のまちづくりの基本的な指針」として『さいたま新都心将来ビジョン』を制定した。再開発を進めているのだが、北与野駅の周りもその範囲に含まれているので、この界隈にもタワマンが何棟か建っているのだ。

シティータワーさいたま新都心
北与野駅近くの「シティータワーさいたま新都心」(筆者撮影)

そんな界隈にあるサイクルショップ「ライフ(さいたま市中央区上落合2-5-33)」は、地元で40年の歴史を持つ自転車専門店だ。店主の大橋政昭さんはこう話す。

ライフ 大橋政昭
店主の大橋政昭さん(筆者撮影)

「もう、40年も自転車屋をやっているんだけど、オープン当初は北与野駅の南側に店があった。再開発が始まったので、こっち(北口側)に越してきました。昔に比べると街はずいぶんきれいになったね」(大橋さん)

ただ、再開発が進んだために、寂しい思いも一方であるそうだ。

「何しろ専門店が減りましたよ。自転車屋もここに来た頃は与野市だけで25店舗あった。それが今じゃ4店舗になっちゃった。競合がいなくなったからって儲かっているかというとそうじゃない。価格だけ比べたら量販店にはかなわない。故障したときだけうちに持ってくるんですよ(苦笑)。本当は2〜3年に1回は定期点検をしておくと長持ちするんだけど、最近のユーザーは壊れるまで乗り潰すって感じでしょ」(大橋さん)

サイクルショップ ライフ
サイクルショップ「ライフ」(筆者撮影)

それでも自転車は生活の必需品だ、なくなることはないと大橋さんは笑う。

「再開発でタワマンも増えて、若い夫婦が増えた印象がありますよ。わりとアップダウンのある街だから、最近は電動アシスト自転車が売れますね」(大橋さん)

タワマンだけじゃない街
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カエルの鳴き声が聞こえたという場所に、突然現れた日本初のタワマン。そこから半世紀が過ぎた。与野ハウスは地元に溶け込み、発展のシンボルとしてそれなりの存在感はあるようだ。前出の黒田さんが言う通り、「タワマンの成功例」のひとつなのだろう。

ただし、全国で増え続けるタワマンが、皆こんな風に“歳を取れる”とは限らない。与野ハウスが示してくれた「歳をとるタワマン」の理想像は、あくまで一例にすぎない、とも感じたのであった。

【もっと読む】「3億円タワマン」の下に経営難に陥る創業130年の下駄屋がある街「月島」 新住民と旧住民の間にある"大きな経済格差"によって見えた深い分断 では、タワマンが乱立する月島を、街に詳しいライターの末並俊司氏が探訪。タワマンが増えたことによる街の変化を、豊富な写真と住民たちへのインタビューからレポートしている。登録すれば本連載の最新記事が届く《こちら》の「著者フォロー」ボタンから。
末並 俊司 ライター

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すえなみ・しゅんじ / Shunji Suenami

福岡県生まれ。93年日本大学芸術学部を卒業後、テレビ番組制作会社に所属。09年からライターとして活動開始。両親の自宅介護をキッカケに介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了。現在、『週刊ポスト』を中心として取材・執筆を行っている。

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