
フロンティア思考が大いに活用されたデバイスの開発秘話を聞く(宮下氏<左>の写真は本人提供、窪田氏の写真は撮影:梅谷 秀司)
2023年に「電気味覚」の研究でイグ・ノーベル賞を受賞した、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科教授の宮下芳明氏。その研究がもとで開発されたのが、塩味を増強できる食器「エレキソルト」である。これまで減塩食を美味しく感じられなかった人たちにとって、希望の光となっている。
一方、これまで軽視されがちだった近視に対して「危険な疾患である」と警鐘を鳴らしているのが、眼科医の窪田良氏だ。自身が立ち上げた窪田製薬ホールディングスでは、近視の抑制を目指した「クボタグラス」を開発し、対策につなげている。
この企画では、先端メディアと目、それぞれの領域で活躍する2人の研究者が語り合う。第3回は、宮下氏がイグ・ノーベル賞を受賞した研究と、「エレキソルト」開発の裏側を紐解いていく。
舌に微弱の電気を流すことで味覚を変える
窪田:宮下先生は2023年に電気味覚についての研究でイグ・ノーベル賞を受賞されて、その研究がもとで減塩食の塩味を増強できる食器「エレキソルト」を開発されました。そもそもどんな経緯で研究がスタートしたのでしょうか?
宮下:2010年頃から電気味覚について研究を始めました。当時、学生だった中村裕美さん(現・東京都市大学メディア情報学部情報システム学科准教授)から研究内容について相談されたことがきっかけでした。当初はコンピュータで色を変えるように味を変えられないか、などといったアイデアもありました。
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