味を変えるのではなく、味わう感覚を変える。電気味覚を使った発明で減塩食の人を助ける「エレキソルト」開発の裏側

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宮下:でも、私は「人間の味の感じ方を電気で変えてみてはどうだろう」と考えて、それを提案しました。料理の味を変えるのではなく、味覚を感じる感覚のほうを変えたら面白そうだなと。味覚検査などでは、舌に微弱な電流刺激を与えて、金属味を感じることで味覚機能の診断をするので、その原理が使えそうだと思いました。

窪田:なるほど。発想の転換ですね。

宮下:それと、子どもの頃に電池を舐めたことがある人なら分かると思いますが、舌にプラスとマイナス両方の電極を当てた時には、金属味を感じますよね。その延長上で味を変えられるんじゃないかと思ったんです。

ところが、実際に食べ物を使って実験をしてみると、舌に直接金属を当てて電流刺激を与える以上に、食べ物を介在して電流を加えた時のほうが、いろいろな味の変化があると気付きました。その理由は「イオン泳動」です。

つまり、食品の中に入っているナトリウムイオンや水素イオンといった塩味や酸味のもととなる味物質が、電気のオン・オフによって舌にくっついたり離れたりする。それにより味覚の変化が起こっていたのです。

電気が流れるストローや箸の開発をスタート

窪田:舌にナトリウムイオンがくっつくことで、塩味を感じやすくなると。非常に面白いですね。

宮下:それで、電気が流れるストローや箸の開発に取りかかりました。そして、電極2つを直接舌に当てるのではなく、1つをストローや箸に、1つを人体に当てるように電気を流す構造に改良したところ、劇的に味の感じ方が変わりました。

たとえば、人体側の電極をプラスにすると、ナトリウムイオンと反発するため舌にくっつかず、食塩水でも水のように感じる。逆にマイナスに切り替えると、ナトリウムイオンが一気に舌にくっつくので、ものすごくしょっぱく感じます。

窪田:塩味以外にも味の変化はあるのですか?

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