「よい提案は通る」は誤解。採用される企画・スルーされる企画の決定的な差とは?――伝え方のプロが教える「提案力」の重要性
なぜ、せっかくの良い提案が通らないのでしょうか。
それは、「良い提案は通るはず」という誤解があるからです。では、どういう提案が通るのでしょうか。それは「相手にとって価値のある提案」です。
例を挙げて説明しましょう。
古い話で恐縮ですが、私は大学4年生の頃、家電量販店でビデオカメラを販売するアルバイトをしていたことがあります。当時、営業職で就職が決まっていた私は、販売額に応じて成功報酬がもらえるその仕事が、就職後の予習になると思ってチャレンジしてみました。
学生の割にはよく販売でき、そこそこの報酬ももらえ「自分は営業でもなんとかやっていけるのではないか」と思い始めた頃、店に格好のお手本がやってきます。
普通の販売員と段違いの販売実績を誇るビデオ販売員が、1日だけヘルプでやってくることになりました。当時、よく売る販売員でも1日5セット売るのは大変でした。でも、その販売員は1日20セット売ったこともあると聞きました。
「最初のひとこと」の大切さ
私は自分の仕事そっちのけで、陳列を整理するふりをしながら、その販売員のトークをこっそり聞きました。なぜ売れるのか。答えは数秒後にわかりました。最初のひとことが違うのです。
普通の販売員は、売り場で来店客がビデオカメラを手に取って見ていると、近寄って「何かお探しですか」と声をかけます。私もそうしていました。お店の売り場主任から、そう教えられたからです。
でも、その販売員は最初のひとことが違います。ここで問題です。ハイレベルな販売員がかけた、最初のひとことは何でしょう? ヒントは「質問である」ということ。
この答えがわかる方は、販売員としても大成功できるかもしれません。
答えは「何を撮るのですか?」というひとことです。
こっそり見ていた最初の商談では、年配のご夫婦(たぶん)に、そう声をかけました。ご主人が少し驚いた様子で、「今度海外旅行に行くので、風景を撮るんだ」と答えます。
販売員は「どちらに行くのですか?」と話しながら相手の懐に入り込み、こう言いました。「海外旅行だと荷物も多いので軽いビデオカメラがいいですよね」「充電の持ちも気になりますよね」。相手は「そうだね」の連発です。
そして、「ならばお客様。今見ていらしたビデオカメラがお勧めです。同クラスで最も軽く、一回の充電で最も長時間撮れます」と言いました。その後、あっという間にご夫婦はレジに行って、そのビデオカメラを買いました。
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