「無化調で作っていますので、毎日の食材のブレで多少味は変わってきます。ですが、毎日届く食材で最高のものを出そうと自分に嘘をつかずに作ってきました。それがそのまま評価につながったのだと思っています」(岡田さん)

しかし、店が繁盛していくにつれ、体が悲鳴を上げるようになってきた。毎日夜中の2時から仕込みを始め、営業終了後片付けを終えた頃には23時になっていた。
ほとんど寝ずの作業で、一日一日の作業で精一杯になっていて、スタッフも雇っていたがなかなか育たず、将来のことなどまったく考えられなかった。
体が限界を迎え、閉店を決意…その後の展開
体はボロボロになり、毎年のように腰を痛めるようになって、ついには手足がしびれるようになってきた。自分は何のために働いているのかわからなくなり、一度店を閉めようと2024年5月、閉店することにした。
「もつけ」の閉店を聞き、ラーメンファンや地元客は大変悲しんだ。もう一度あの味を食べたいと多くの声が上がっていた。その頃にM&Aの話が上がってくる。
グループ会社にM&Aの会社を持つグループ代表の水谷佑毅社長は、「もつけ」の承継の話を聞き、自ら事業承継をすることに決めた。ラーメン店の事業承継は初の試みで、とにかく岡田さんの思いに共感したという。岡田さんは迷った。
「『もつけ』という屋号に並々ならぬ思い入れがありますので、それをそのまま承継してもらうというのは難しい選択でした。私がラーメンを作ってこその『もつけ』なので、ここは守りたいなと思ったんです。たとえ、受け継いだ後においしいラーメンを出したとしても必ず私と比較されます。それは違うなと思いました」(岡田さん)
こうしてM&Aを諦めかけたその時、新しい話が湧いてくる。新しいラーメン店を作るのでその味づくりをしてくれないかという提案だった。これならできるかもしれないと岡田さんは直感的に考えた。
「一気に夢が広がりましたね。職人だけやってきたら知りえなかった世界です。今までは要の部分をほぼ一人でやってきましたので、限界が見えていました。このやり方なら他店舗や海外展開も見えてきます。一人では見ることのできなかった高みが見えてきたんです」(岡田さん)
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