慶応大学准教授の中室牧子氏による、「学力の経済学」が異例のベストセラーとして話題を集めています。
教育を経済学的に分析した書籍など、普通のおばさんである私には理解するのも難しいに違いないと、大手新聞で絶賛されていたにもかかわらず、私は本書の読書を後回しにしていました。ところが冒頭から本の内容は、「ご褒美で釣っても『よい』」「ほめ育てしては『いけない』」「ゲームをしても『暴力的にはならない』」とあります。私たちが普段接している、この反対の「常識」には、科学的根拠がないと記述されているのです。根拠の無い通説や思い込みに気づかされることが多く、最初から一気に引き込まれました。
経験だけで語られてきた教育
確かに日本では、たとえば財政政策に、財務大臣が「私の経験から」と発言することはありません。しかし教育政策では多分に、権威のある人が(専門家でもないのに)自分の経験に基づく発言をすることに、さほどの違和感はありません。
世の中には、どこかの誰かの受験成功体験や主観に基づく逸話に、藁にもすがる想いで群がる人はいっぱいいます。誰かが成功したからと言って、その通りに真似できるものでもないのに、教育に科学的な根拠が必要だという考え方が、官にも民にもほとんど浸透していないことに、中室氏は警鐘を鳴らされました。
教育経済学で多くのデータを用いて明らかにしている教育や子育てに関する発見は、「知っておかないともったいないこと」でいっぱいだそうです。特定の個人による成功体験より一般性の高い、その「もったいないこと」の数々を、本書は明らかにしてくれます。
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