米国では2000年初頭から、科学的根拠に基づく教育政策に、大転換したそうです。ノーベル賞やそれに準ずる賞を受賞した多くの優れた経済学者による実験や研究業績で、さまざまな良い教育法の科学的根拠は提示されていますが、そのような米国で実証された「根拠のある教育法」が(日本ではそのようなデータすら開示されていない、という忸怩(じくじ)たる思いと共に)本書では数多く紹介されます。
以下では膨大なデータで示された科学的根拠に基づく、「成功する子どもの育て方」の中、多くの親御さんが関心をお持ちになるだろういくつかを抜粋させていただきます。
ご褒美戦略は正しいか
まず、「子どもをご褒美で釣って勉強させる」のは、ご褒美がないと勉強しない子になるなどと、否定的な意見が大勢です。ところがこれは、科学的根拠がないそうです。
将来を考えれば勉強したほうがよいとわかっていても、勉強せず目先の楽を選ぶ子どもがいるのは、仕方がないことです。
そうであるなら将来の利益を先送りし、目先の利益や満足を選ぶ子どもの目先に、ご褒美をぶら下げる戦略は、今、子どもを勉強するように仕向けるのにとても有効な方法だと、「実験」結果は示したそうです。
ただ、そのご褒美の与え方で、効果が異なります。「テストでよい点をとればご褒美をあげる」(アウトプット)と、「本を読んだらご褒美をあげる」(インプット)の実験では、テストの結果は一見前者の方がいいように思いますが、「本を読んだらご褒美がもらえる」グループの方が成績が上がっています。
これはインプットにご褒美が与えられた場合、読書や宿題など、「なすべきこと」ことが明確です。一方アウトプットにご褒美が与えられた方は、具体的な方法が示されていないので、何をすればいいのか、熱意があっても勉強の仕方がわかりませんでした。
これはアウトプットにご褒美を与える場合は、勉強の仕方を教えるか、その指導者をつけるなどとセットでないと、効果がないことを示しているのだそうです。やみくもにニンジンさえぶら下げればいいのではありませんでした。
本書の内容は、個人的な育児経験と整合していることも多く、腑に落ちることが大変多かったです。学歴の高い友人に囲まれて努力をすると、自身の学力もアップするというデータ分析結果も示されています。わが家でも息子が朱に交わって赤くなるように、学歴の高い友人たちと切磋琢磨してほしく、進学中学校への入学作戦に力を注ぎました。
実はわが家の一部の子どもに採ったニンジン作戦は、私たちの親バカ子バカをばらすようなもので恥ずかしく、ずっと私は外部には秘密にしていました。今回これに科学的根拠に基づいているというお墨付きがつき、今ではまんざらでもありません。当時は勉強から逃げる子に何もしないよりはと、なりふり構わず取った作戦でした。なんとこの作戦が、「実験」を知らなかった私に、「科学的に効果が証明されたニンジン作戦」を実行させていたのです。
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