「やりたいこと」より「役立つ資格」を選ぶ人の盲点 「社会が設定した欲望」は誰がつくっているのか

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勉強する大学生
「役に立つ資格」を選ぶ学生は多い。しかし、10年後、20年後に社会が求めるものは変わっているかもしれない(写真: Fast&Slow/PIXTA)
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――例えば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、前回に続いて、著者の舟津昌平氏と文芸評論家の三宅香帆氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。

「役に立つ資格って何ですか?」と聞く学生

舟津:学生から最もよく聞かれる質問の一つが「役に立つ資格って何ですか」というものです。私の考えでは、何かやりたいことがあって、そのために資格が必要だから取る、という発想が自然だと思います。もちろんそう考える学生もいる中で、「役に立つ資格は何か」という質問には、その発想が欠けているように感じます。

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鳥羽和久さんと対談した際、鳥羽さんが「社会が設定した欲望」という表現を用いられました。「役に立つ資格を取る」というのは、その人がやりたいものではなく「そうしないといけない」と社会が設定したものなのであると。学生にそういうことを言うのはまず親御さんだろうし、大学も加担している。でも、若者側にも「本当にそうしないといけないの?」という疑問があってもいいと思うんです。

三宅:そうですね。本書で「いい子症候群」について触れていますが、基本的に高校生までは「親の言うことを聞きなさい」とか、「迷惑かけないように生きなさい」という論理の中で生きています。だから、大学生になって初めて「やりたいことをやれ」と言われても、「やりたいことじゃなくて、求められることをやりたい」という感覚になるのは仕方ないかなとも思ったりします。

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