現代社会では「自分らしさ」が不要とされる理由 ビジネスの論理に飲まれないための「ノイズ」
「生き残る条件」という強迫観念
舟津:学生たちを見ていると、「社会を生き抜くためには、こういう条件を満たさないといけない」という強迫観念に囚われている人たちが多いようには思います。
この原因は大きく2つあると思っていて、1つ目は拙著でも触れたように、反実仮想ができないから。つまり、「もし○○の条件を満たしたら/満たさなかったら」の両方のルートを現実で経験することができないからです。
例えば就活では、約9割の人がなんらかのインターンをしていると言われています。なぜなら、インターンに参加しないと受からないと思っているから。でもこれって、典型的な誤った推論なんですよ。内定を取った人はインターンに行っているから、自分も行かないと内定がもらえない、っていう。「すべての犯罪者はパンを食べていた」という類の話と同じです。
もちろん、自分だけ損するのは嫌だから、条件を捨てる勇気が出ないというのはわかります。でも、条件ってどんどん増えていくんです。内定を取った学生はみんなインターンに参加していて、バイトしていて、留学に行っていて、授業は真面目に出ていた、というように、学生を苦しめる「条件の誤認」が重なっていく。みんなそれらをやってるから自分もやらないと、っていう条件は経時的に増え続けるわけです。