現代社会では「自分らしさ」が不要とされる理由 ビジネスの論理に飲まれないための「ノイズ」

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三宅:自分らしくない、それっぽいロールプレーみたいなことに全乗っかりしすぎると、いびつになってしまいますからね。

例えば私がよくやる文章講座では、「ありきたりな言葉を使ったら、それに修正をかけるようにしましょう」と言うんです。本の感想を書くとき、「泣ける」とか「考えさせられた」みたいなありきたりだけどつい使っちゃう言葉をNGワードにして、じゃあ他に何を使うか考えよう、と。

就活や仕事でもきっと同じで、それっぽい言葉や振る舞いばかりでは、自分らしさを消すことになり、しんどいだけです。その点に社会は気づいてほしいと思いますね。

ノイズを楽しむことはどんな生き方とも両立できる

舟津:そうですね。ただ、読者の方に誤解のないように念のため言っておくと、私は別に「就活をするな」って言いたいわけではないんです。その努力を否定はしないし、できない。伝えたいのは、就活にコミットする必要はあるなかで、ノイズの魅力を見つける意識を持っていてほしいということです。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

もし就活に全ベットしたとしても、その中でノイズの魅力を見つけることは両立可能だと思っています。例えば、自己分析をするなかで、仕事に関係なく本当に興味のあることや好きなことが見つかったり、創業者の記事や書籍を読むなかで、完璧でない側面を知ったりすることはあるのかなと。どんな生き方や選択をしても、その中でノイズの魅力を見つけることができる。それは、別の生き方を否定しなくても成立する努力だと思います。

本の読み方も同じで、役立つところだけ3行でまとめてもつまらないですよね。ノイズを楽しむ、ノイズの魅力を見つけていくというのは、少し注意の向け方を変えるだけでできることですし、学生でもやりやすいことだと思います。

三宅:ノイズの魅力を見つける能力って、続けていけばどんどん上がる気がします。それが余裕とか、全身全霊になりすぎないとか、真面目になりすぎないことにつながるんじゃないですかね。ノイズが魅力であることをもっと発信していきたいです。

舟津:そのとおりですね。

三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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舟津 昌平 経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

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ふなつ しょうへい / Shohei Funatsu

1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。京都大学大学院経済学研究科特定助教、京都産業大学経営学部准教授などを経て、23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

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