現代社会では「自分らしさ」が不要とされる理由 ビジネスの論理に飲まれないための「ノイズ」

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舟津:2つ目の原因としてSNSの影響も大きいと思っていて、そういう条件がはっきり可視化されるツールになっている。「この人はあれもこれもどれもやってるから、成功者なんだ」と、自分にもそれらが全部揃ってないとそうなれないような錯覚を起こしてしまう。

三宅:SNSって、努力を見せるツールとして使っている人も多いですからね。就活だと、オープンチャットで、「ESでこういうことを書きました」とか「面接ではこう答えました」とか情報をかなりシェアし合っている。そういうものを見ていると、「あれをしなきゃ、これもしなきゃ」と余計に思ってしまうのはよくわかります。

本当に必要な条件はごく限定的

舟津:ただ、その中には要らない条件も入っているはずなんですよ。でも誰も、そのことを確かめられない。自分の身をもって確かめるような人がいたら逆にすごいと思いますけど、普通はそんなことしないですよね。そういう意味で、あれもこれもできないといけないんだという強迫観念が強まって、降りることができないチキンレースになってしまっています。

舟津 昌平(ふなつ しょうへい)/経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。
舟津 昌平(ふなつ しょうへい)/経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

三宅:前回お話しした、「受験に合格するために、部活を、SNSをやめます」というお話と通ずるところがありますよね。つまり、目的を達成するための条件が増えすぎているから、結果的に他のことに手が回らなくなっている。目的達成には不要な「ノイズ」として切り捨てられてしまっているのかなと思います。

舟津:本当にそう思います。でも、世の中ちゃんと見れば、当たり前ですけど完璧な人ばかりじゃない。何でもやらないと幸せになれないとか、生き残れないというわけではない。

学生には胸を張って言いたいです。大学の先生を見てみなさいと。変な人やダメな人ばかりじゃないですか(笑)。でも、そういう人たちばっかりでも、その人たちも自分なりに頑張っていて、そうやって世の中は回っているんだから、余裕を持って生きるべきだと思うんです。

その中で、「この人はこれが良いから生き残っているんだな」と感じられるものはある。それはごく限定的な性質のはずです。全部が完璧だから生き残っているわけではなくて、欠落している部分があっても、大事なものがちょっとだけあるから生き残れている。自分にとってそれが何なのかを見極める。

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