今はなき東大の寮
「九龍(クーロン)城砦みたいで楽しい場所だったよ」
齋藤洋介さん(インタビュー当時44歳)は、駒場寮についてそう語った。
駒場寮は、かつて東大の駒場キャンパス東側に存在した学生自治寮である。東京大学大講堂(通称、安田講堂)の基本設計者である内田祥三(後に東京帝国大学総長)が設計し、1935年に建設された鉄筋コンクリート造の、由緒正しい東大の寮だ。「かつて」と書いたのは、すでに取り壊されて、今はもう存在しないからだ。
1991年10月に教養学部の教授会で廃寮が議題に上って以降、寮の明け渡しと取り壊しを巡り、大学と学生は何年にもわたり激しく争った。
「駒場寮闘争」と呼ばれるこの争いは、2001年8月、裁判所の決定に基づいて約600人の教職員と警備員が動員され、機動隊も待機し、寮明け渡しの強制執行がなされる形で終息を迎えた。東大文学部卒の齋藤さんも、駒場寮闘争に参加していた。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら