日本の天皇が「血筋より家の存続」で選ばれた合理的理由 中国の皇帝と決定的に違う「血統への考え方」

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宇佐八幡宮の神官は「道鏡を天皇にせよ」という託宣を出したが…(写真:tokomaru7/PIXTA)
日本の歴史を深く理解するうえで欠かせないのが、「家」の存在が果たしてきた役割です。特に平安時代において、この「家」の概念は、最高権力者である天皇家のあり方にまで決定的な影響を与えていました。本稿では、『日本史の血脈』より一部抜粋のうえ、万世一系と伝えられる天皇家について見ていきます。

源氏物語に見る天皇家の血筋

天皇はその血筋の正統性が重んじられる一方で、真に重んじられたのは「家」の存続でした。

まずは、日本最古の長編小説と言われる『源氏物語』の世界を振り返ってみましょう。あらすじを見てみると、主人公の光源氏は天皇の子として生まれますが、跡継ぎ候補ではなかったため、「源氏」という氏を賜って臣籍に降下し、形式的には一般人という立場にいます。

しかし、その後、光源氏は義母と禁断の関係に陥って子どもをもうけます。義母が光源氏の子であることを隠し続けたため、その子はやがて天皇として即位するのです。

どうでしょうか。普通に考えたら「そんなことして大丈夫なのか」と感じてしまう物語ですが、これを当時の人々が読んでも「これはおかしいだろう」との批判の声は上がらなかった。

つまり「一般人になった元皇族の血縁が、天皇に即位するなんて絶対にあり得ない」という厳密な発想は、平安時代の日本にはなかったのです。

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