【写真あり】東大卒で警備員に。就職氷河期時代のなか彼はなぜ《年収1100万を捨てた》のか――"九龍城砦”と化した東大駒場寮で学んだこと

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「社会に出てしまえば学歴は関係ない」とよく言われるが、大学の受験偏差値と年収には相関があり、多くの東大卒業生が社会人になってから高収入を得ている。学生のころの一時的なアルバイトならいざしらず、東大を出た後も給料の低い警備員をしている齋藤さんは、東大卒業生としては異質といえるだろう。

「新卒一括採用」への反発

「就職活動をしなかったんだよ。社会に出るにあたって何をすればいいか調べもしなかった。そもそも大学ってのは学問の場であって、就職予備校ではないはずだろ? 自分がやっていた学問の延長に就職があるならいいけど、たいていの人は大学で学んでいることとまったく違う分野の仕事に就こうとするじゃない。

日本は新卒で就職しないと損をする社会だから、みんな本当は興味がない会社でもさも関心があるように振る舞って潜り込もうとするんだけど、そんなのはおかしいと俺は思う。君はどう思う?」

3年生のある時期になると、大学院に進学しない学生の多くは講義やゼミへの出席をそっちのけにして横並びの就職活動を始める。しかし、齋藤さんは「その光景が気持ち悪かった」と言う。

「新卒一括採用なんて、まったくもって愚かなシステムだよ。でも、日本でそれなりの会社に正社員として入社するには、新卒での就活に参加しないといけないんだよね。

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君みたいな若い人は知らないだろうけど、俺らくらいの世代は、学生時代がいわゆる『就職氷河期』というやつでさ。東大生ですら、ろくな就職先がなくて、同期はみんな悲愴感を漂わせながら就職活動をしていたよ。

世の中には、新卒での就職活動がうまくいかなくて自殺するやつもいるんだろ? 学生にああいう活動を強要する日本社会の雇用慣習は、間違っていると思う。

俺はそんな社会システムに唯々諾々と従う気にはなれなかったし、そもそも会社員にも公務員にもなりたいとは考えていなかった。だから、就職活動はしなかったんだ」

しかし現実として、社会で自立して生きていくためには、実家がよほど裕福でもないかぎり、なんらかの仕事に従事し、収入を得なければならない。そんな疑問を口にすると、齋藤さんは照れくさそうに「実はさ、卒業後しばらくは出版関係の仕事をやっていたんだよね」と答えた。

池田 渓 書籍ライター

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いけだ けい / Kei Ikeda

1982年兵庫県生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程中退。フリーランスの書籍ライター。共同事務所「スタジオ大四畳半」在籍。

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