【写真あり】東大卒で警備員に。就職氷河期時代のなか彼はなぜ《年収1100万を捨てた》のか――"九龍城砦”と化した東大駒場寮で学んだこと

1995年に東京大学の文科三類に入学した齋藤さんは、しばらくは県人寮に住んでいたという。
駒場寮で自由を満喫
「実家は自給自足でなんとか生活しているような貧乏農家で、仕送りがなかったんだよ。多くはない奨学金で東京生活をしなきゃならなかったから、2人部屋で月の家賃が2万円という県人寮はありがたかったな。
ただ、すぐに駒場寮の存在を知って引っ越したんだ。だって、駒場寮は月の家賃がたったの5000円だっていうからさ。大学内で見かけた入寮のチラシにあった『日本一きたない学生寮』っていう煽り文も魅力的だったね」
実際、齋藤さんが入寮したころの駒場寮は建物の老朽化が進んでおり、廃墟も同然だった。しかし、そんな駒場寮での生活を、彼は「楽しかったなぁ」と懐かしむ。
「ツタに覆われたボロボロの建物の中にはいろんなサークルの部室があったし、コーヒーが1杯50円で飲めるカフェもあった。大きな劇場や壁一面がピンクに塗られた会議室、全自動卓が置いてある雀荘部屋なんてものもあったね。寮だから、もちろん台所やシャワー室もあった。
そこら中いたるところ落書きだらけでさ。九龍城砦内のスラムみたいな場所なんだけど、そんなゴチャゴチャとした場所で気心の知れた連中と共同生活を送るのは最高だったよ」
齋藤さんが語る寮生活は、自由そのものだ。
「朝起きたら、寝間着のジャージのままで講義に出る。講義が終わったら寮に戻って、図書館で借りてきた本を読んでいたね。地元にはまともな図書館がなかったから、蔵書が豊富な大学の図書館には夢中だったよ。本を読んで時間をつぶしていれば金も使わないしさ。
夕飯時になると、寮の屋上でバーベキューをしたよ。毎日キャンプ飯みたいなものを作っていたおかげで、料理はかなりうまくなった。火加減と塩加減が身につけば、大抵の料理は失敗しないんだよ。
食事が終わったら寝酒をあおって寝るんだけど、寝つけないときは深夜の駒場キャンパスを徘徊したりなんかしてね。キャンパス内にいるネコに餌付けもしてたな。とにかく、無法地帯と好きなだけ本が読める生活を満喫していたよ」
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