では、どうしてここまで、もやしは安く売られているのでしょうか。
もやしの生産を手がける(株)旭物産の会長で、工業組合もやし生産者協会理事長を務める林正二さんに伺うと、1つは「生産者と小売店との隔たりに理由がある」といいます。
というのも、もやしを安く売ることは、スーパーなどの小売店が自店の安さをアピールする看板になり、もやしが安い=お店の野菜全体が安いという印象を与えやすいのです。
「小売店もわれわれの窮状は理解しているものの、競合店の多い地域では利益を求めず、安く売る。すると他店も対抗するという構図になってしまっている。適正価格で売買されないことで、生産者は卸価格を上げるのが難しく、打撃を受けています」(林さん)
さらに、もやしが工場栽培で安定して大量生産できることも影響していると、林さんは話します。
小売店にとっては、年中安定した価格・品質で取引できるもやしは、仕入れ見込みを立てやすいがゆえ、安売りの常態化につながってしまうというのです。安定的な供給ができる野菜だからこそ、「価格の優等生」だからこそ抱えるジレンマといえるのかもしれません。
もやしが食卓から消える!?
そして、非常に大きな問題が、もやし生産者の激減です。
1995年は550以上だった生産者数が、2022年では110と5分の1に(工業組合もやし生産者協会調べ)。いくら企業努力を重ねても、生産コストに価格が見合わず赤字経営となり、廃業する生産者が相次いでいるのです。
もやしはもっと値上げしてもまだ十分に安く、家計の頼りになります。もやしは冷凍術をうまく活用することで、その魅力をさらに広げられると考えます。
もやしが日本からなくなってしまわないように、私たちがもやしをこれからもおいしくいただくために、もやし生産者を取り巻く窮状にも、耳を傾けてみてほしいのです。
(構成/田中絢子)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら