第4回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション--受賞企業担当者に聞く経営戦略としてのダイバーシティ

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日本でのもう1つ重要なテーマは女性の活躍推進です。04年ごろから、ソニーグループにおける欧米と日本の女性社員比率、女性管理職比率の差異に問題意識を持ち、社長直轄のダイバーシティ・プロジェクト、通称DIVIを05年に立ち上げました。

最初のテーマとして、まずジェンダー、女性の活躍推進に焦点を置いた活動を女性管理職約20名でスタートしました。メンバーの任期は2年で、3期目からは男性メンバーも加わり、男女双方の視点で女性活躍推進のテーマに取り組んでいます。また08年2月からはダイバーシティ開発部が専任組織として新設され、DIVIが実践する草の根活動や経営トップへの提言と連携し、人事施策への展開、組織的な対応を広くスピーディに行う機能を担っています。

DIVIプロジェクトは現在第5期目の活動を総括する時期にきていますが、DIVI活動の提言は会社施策へも積極的に活用されています。たとえばメンター制度もその1つです。また、女性管理職育成登用の目標においても、DIVIからの提言をきっかけとして経営層が議論をしています。その結果、人材育成ターゲットとして人事部門が職場と連携した育成を行っています。トップはDIVIメンバーとの定期的な意見交換を通して、女性社員が置かれている立場、環境等への理解を深め、経営的かつ育成的な視点でプロジェクト活動を支援してくれています。DIVIメンバーは本来の自分の業務の傍ら、全社的視点、経営的視点でプロジェクト活動に取り組み、現在60名のDIVI卒業生がチェンジエージェントとして会社の組織の中で動いています。ダイバーシティ開発部を中心とした人事部門では、DIVIと連携しながら、女性社員の採用、意図的な女性育成登用と両立支援を行うことで、女性社員のキャリアパイプラインの構築に取り組んでいます。

また、制度がより積極的にキャリア形成に活かせるような環境を目指して、意識啓発と支援活動も積極的に行っています。社内イントラでのメッセージ発信も積極的に行い、月間2万~3万件のアクセスがあります。こうした取り組みの結果、女性リーダーの育成は着実に進んでいると実感しています。女性社員に期待しているというメッセージも浸透し、女性の意識も改革されています。また、トップをはじめとするマネジメント層の女性登用に対する意識も高まりつつあり、管理職比率の増加、エンジニア部門における部長職の誕生、部門長クラスの女性も複数出てくるなど、上位職の活躍も増えています。

障がい者雇用では、「自律を目指す障がいのある方々が障がいを感じない、感じさせない、生き生きと働ける環境」を目指しています。そのためにはトップの理解、職場の理解と協力、そして個人の意識・意欲が重要です。また人事・総務部門の支援が必要だと考え、特例子会社ソニー・太陽�が実践してきたノウハウを活かし、グループの雇用事例等も加えて支援しています。ソニー・太陽は創業者である井深大の「障がい者だからという特権なしの厳しさで、健常者の仕事より優れたものを」という考えの下で32年前から活動している会社です。特例子会社とはいえ、簡単な業務のみを行う会社ではなく、マイクロホンの設計、製造、出荷、アフターサービスまで一貫して行う、国内では唯一のマイクロホンの基幹工場です。

グローバル化が進む中で、日本でのダイバーシティ活動は大変重要になってきています。これまでジェンダー、障がい者雇用を中心に活動してきましたが、この活動を通して日本の組織の中でもダイバーシティの意義が十分に浸透してきていると考えています。またダイバーシティのノウハウを蓄積できたことで、今度は地域ごとに行っているダイバーシティ活動との連携を本社主導で進めるという新たな取り組みに向かっていきたいと考えています。

 

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