「鍋から煙が…」憧れの仕事を辞めた彼女の気づき 「教員を休職→空白期間」経て選んだ新たな人生

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休むために毎日電話をかけることもプレッシャーになっていた成田さんは、正式に休職することを決意。休職を始めた当初は復職することも選択肢にあったが、1カ月もすると心境が変わってきた。

「休んでる間は、子どもとずっと一緒に過ごせましたし、ゆっくり家事もできました。その時間が、本当に幸せだなぁ、と感じたんですよね。だんだん、『職場に戻って教員として働くのが“普通の自分”だと思っていたけど、本当にそうなんだろうか。また過酷な日々を繰り返すとしたら、なんか違うな』と、思うようになったんです」

成田さんは、教員を辞める決心を固めていった。それは、小さい頃からの夢を手放すことでもあった。

休職で気づいた「働きたい」という気持ち

休職中の成田さんを待っていたのは、教員になってからは経験できなかったような穏やかな日々だった。

やりたくてもやれなかった掃除を、丁寧にした。いらなくなったものは断捨離、必要なものは整理整頓。それまで短時間で作れるものばかりだった料理も、時間をかけられるようになった。空いた時間には本を読んだり、カフェに行くこともあった。

夕方4時半には長女を保育園に迎えに行き、ゆっくりと散歩しながら帰ってくる。道端に咲いたたんぽぽを見つければ、立ち止まって「綺麗だね」と眺める。それまでは6時半に迎えに行き、長女を自転車に乗せて急いで帰ってきていたから、花に目を止める余裕なんてなかった。

家に着いたら、夕飯をゆっくり作り、家族みんなで食卓を囲んで、今日起こったことを話す。家庭に笑顔が戻ってきた。

成田さんいわく、休職期間は「100%専業主婦の時期」。それは穏やかで、深い幸せを感じるものだった。一方で、成田さんは湧き上がってくる別の感情にも気づいていく。

「家でゆっくりする時間があるのはすごく幸せだな、と思う反面、『家事や育児だけだと私はダメなんだな』って気づきました。暇になってきちゃったんですよね。だからまた働きたいな、と。

かといって、以前のように仕事ばかりの生活は、自分にはもう絶対に無理だとわかっていました。今の私にとっては、仕事と暮らしのバランスがいい生き方が幸せなんだなと、自分の考えがまとまってきたんです」

成田さんは家事や育児と並行して転職活動をはじめ、大手教育系企業に内定。教員を辞め、転職した。休職から半年後のことだった。

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