「仕事休むのが怖い」を40歳で脱した男に起きた事 なぜ私たちはワーカホリックをやめられないのか

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40歳のとき難病を発症し、働くことができなかった経験を持つ永井さん。彼の”キャリアブレイク”から学ぶことがたくさんあります(写真:筆者撮影)
「あなたの履歴書に、空白はありますか?」
そんな質問にヒヤッとした方に、この連載が届いてほしい。
育児、介護、闘病、学業など、さまざまな理由で、働くことができない時期がある人は少なくない。そうした一時的な離職・休職期間は、日本では「履歴書の空白」と呼ばれ、ネガティブに捉えられることもある。
しかし、履歴書に空白期間ができたからといって、人生が空白になるわけじゃない。立ち止まって、悩み、もがき、笑ったり涙したり。そんな期間が、その後の人生にとって大きな意味を持つこともあるのだ。
欧米では、一時的な離職・休職期間を「キャリアブレイク」とよび、肯定的に捉え、制度的にもサポートする文化があるらしい。日本でも「一般社団法人キャリアブレイク研究所」が設立されるなど、離職・休職期間を捉え直す取り組みが始まっている。
この連載「キャリアブレイク~履歴書の空白と生きる~」は、さまざまな人の離職・休職期間に光を当てる。その期間が、当事者にとってどんな体験だったのか。その後の人生にどのような影響を及ぼしたのか。そんな語りに耳を傾けることを通して、私たち自身の離職・休職期間についても捉え直していきたい。
今回インタビューしたのは、永井勇成さん。映画情報フリーマガジン『DOKUSOマガジン』の編集長やフリー素材モデルとして活躍する永井さんだが、かつて難病に指定されている「皮膚筋炎」を発症し、働くことができなかった経験を持つ。
死と隣り合わせの休職期間は、永井さんにとってどのような経験だったのだろう。
永井勇成さんのプロフィール:地元石川県では映画館、家電量販店、菓子メーカー営業を経験。35歳で上京し、株式会社LIG入社。オウンドメディア運営事業の発足、各社のメディア運営に従事。その後、株式会社ビットエーへ転職し、広報として同社の認知拡大に注力。その後は人事にて社内文化の醸成を担当。全国各社が参加する社内報アワード2019にてブロンズ賞を獲得。現在は株式会社DOKUSO映画館で映画情報フリーマガジン『DOKUSOマガジン』の編集長。フリー素材サイト「ぱくたそ」のモデルとしても活動中。

「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」

永井勇成 (以下、永井):『ぼくのなつやすみ』っていうゲーム、知ってますか? 僕、あれが好きなんです。

ーーあぁ、名前は聞いたことがあります。どんなゲームなんですか?

永井:少年が夏休みに田舎に行って、昆虫採集とか魚釣りとかをしながら過ごすんですけど、1日が終わると、絵日記が出てくるんですね。

「今日は川の主を釣りました」「ひまわり畑に行きました」みたいなことが書かれるんですけど、1日なにもせず、ただ歩きまわって過ごすと、「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」って絵日記になるんですよ。

僕は40歳のとき、難病であることがわかって、約4カ月働けなかった期間があります。そのときを思い返すと、それまで休むことが怖かった自分が「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」と思えるようになるきっかけだったなぁと思うんですね。

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