ーーそこまでの状態だったんですか。
永井:皮膚筋炎は肺炎と相性がわるくて、肺炎になると一気に悪化して死んでしまうらしいんです。そのとき僕は、肺炎も併発していて。診察室でお医者さんに「最大限の努力をします」と言われました。「治します」、じゃなかったんですよ。「あ、死ぬのかもしれない」って、そのとき悟りました。不思議と僕は泣かなかったんですけど、一緒に説明を聞いていた妻はわんわん泣いてましたね。
ーー幸い、その後の治療が効果があったんですね。
永井:はい。入院して、ガン治療にも使われるような薬を点滴したり、血液中の血漿を健康な方の血漿と交換する治療などを行ったら効果があって、約4カ月後に退院することができました。
もちろん、退院後も治療は続いていますし、投薬の副反応かもしれないですが、最近「特発性大腿骨頭壊死症」になってしまって、両足の手術をしたところなので、なにも病気の影響がなくなったわけではないですけどね。
「休むとダメになってしまう」は思い込みだと気づけた
ーー入院していた期間が、「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」と思えるようになるきっかけだった……というのは、どういうことでしょう?
永井:もちろん治療は大変だったんですけど、「休むのが怖い」っていう価値観が変わって、すごく生きるのが楽になったんですよね。病気になったら、誰からも「仕事をしろ」って言われない。休むことの大義名分があるので、ぼーっとしてても許されるじゃないですか。
だから、朝起きてから夜寝るまで、まったく有意義なことをしなかった。本も読まないし映画も見ないしテレビも見ずに、ただただぼーっとして、気づいたら夜になってる。そんな時間をすごすうちに、「ぼーっとしてる一日もすばらしいじゃないか!」って思えるようになったんですよ。
ーーそれまでは休むことが怖かったけれど、休むのもわるくないと。
永井:はい。「休むとダメになってしまう」って思っていたけど、休まざるを得ない状況になったら、めちゃくちゃ楽になって。別に誰も、休んだからって怒ったりしない。「休むとダメになってしまう」っていうのは自分の思い込みだって気づくことができたんです。むしろ、休むことで「なんにもないすばらしい一日」と出会えるんだと。
今では「休むとダメになってしまう」って思いそうになったら、あの時のことを思い出して、ただただぼーっとする自分を許してあげられるようになりました。
ーー休むことに不安を感じてしまう人には、「なんにもないすばらしい一日」があるということは勇気になりそうですね。
永井:いや~、とはいえ、なかなかむずかしいですけどね。「休んでいいんだよ」って周りから言われても、休むことの恐怖ってなかなか拭えない。実際に休んでみて、はじめてわかるんだろうなと。
だから、いざ休まないといけなくなって、自分を責めてしまいそうになるときが来たら、「そういえば、休んでいいって言ってる人がいたな」って思い出してくれたらいいなと思いますね。