休むことが怖かった
ーー休職期間のことをくわしく聞いてもいいですか?
永井:当時独立したばかりで、自分がフリーランスに向いてないと思い始めた時期でもあったんです。オンとオフの切り替えができず、寝ていても仕事のことが気になってしまって。休みの日、なにも仕事をしないでいると、夜寝る時に「今日は無駄に過ごしたな……」ってめちゃくちゃ後悔する、みたいな。
ーー当時は「なんにもないすばらしい一日」とは思えなかったんですか。
永井:ぜんぜん思えなかった。たぶん怖かったんです。「なにかプラスになることをしていないと、自分はダメになってしまうんじゃないか」って。旅行中なのにパソコンを開いてしまって、気づいたらめっちゃ仕事してた、みたいなこともありますし。
ーーすごく共感します。僕も休みの日でも、筋トレしたり読書をしたり、なにか生産的なことをしていないと不安になる、ということがあります。永井さんは「休むとダメになってしまう」という怖さを、いつから感じていたんでしょう?
永井:いつからですかね……地元で個人事業主をやっていたときから感じていたかもしれないです。
永井:地元の石川県で、30歳をちょっとすぎるくらいまで会社員をやっていたんですけど、離婚をきっかけに会社を辞めたんです。観光土産菓子の製造販売をしてる会社の営業だったので、観光地をまわらなくちゃいけない。すると、子ども連れの家族を目にするじゃないですか。僕は子どもと会えなくなってしまっていたので、当時はそれが本当につらくて。
だから会社を辞めて、個人事業主として iPhone修理のお店を始めました。最初は順調だったんですけど、しばらくしてぜんぜん予約が入らない期間が何カ月も続いて……。仕事がないと、自営業なので当然収入はないわけです。休むのが怖くなって、お昼にドラマの再放送を見るのが唯一の楽しみ、みたいな生活になりましたね。
「俺はこのままだとダメになる」っていう危機感が、ものすごくあった。なので状況を変えるために、東京のWeb制作会社の求人に応募して、35歳で上京したんです。