ブラック組織からの逃げ方まで指南している易経 「君子豹変」「虎視眈々」日常に潜む古典の言葉

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私たちを取り巻く「先行きの見えなさ」「不安」の中で、生き抜く知恵を探ります(写真:Hellohello/PIXTA)
なぜ「無敵の人」が増え続けるのか、保守と革新は争うのか、人間性と能力は比例するのか。このたび上梓された『武器としての「中国思想」』では、私たちの日常で起こっている出来事や、現代社会のホットな話題を切り口に、わかりやすく中国思想を解説している。
同書の著者で、中国思想研究者である大場一央氏が、生活の中で案外使える中国思想の魅力を読み解く。

「杞憂」が生まれた理由

『第三次世界大戦はもう始まっている』(エマニュエル・トッド)という、衝撃のタイトルの本が出版されたのは、2022年のことである。この1年前には、米軍の撤退を契機として、イスラム原理主義組織タリバンが、アフガニスタンを制圧していた。

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そしてこの本が出版された年には、現在も進行中のウクライナ戦争が始まった。今年に入ると、イスラム原理主義組織ハマスによる、大規模なイスラエル攻撃が行われた。また、東アジアでも中国による台湾侵攻の可能性が指摘され、数年以内に台湾危機が起こるのでは、という不安がささやかれ始めた。

明らかに不安定になった国際情勢は、ある種の終末論のような不安をかきたてる。すなわち、世界で核攻撃の応酬がくり広げられ、多くの人々が死に、地上が灰燼に帰するのではないか、あるいは世界経済が崩壊し、多くの企業が連鎖倒産して、生活必需品ですら満足に手に入らなくなるのではないかといった、良からぬ想像を膨らませてしまう。

そうでなくとも、景気の悪化や生活の不安など、未来のことを考えると、ろくろく眠れやしない。そんな人も多いのではないだろうか。

先行きを不安がるのは人間の癖のようで、古代中国では、杞という国の人が、いつか天が崩壊して落ちてくるのではないかと、いつも心配していた。これを嘲って、いらぬ心配をあれこれすることを、「杞憂」と言うようになった。

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