両利きの経営「生産性が下がる」残念な会社の盲点 ハーバードで学ぶパフォーマンスを高める方法

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悩む女性
日常業務に追われると、なぜ戦略的な意思決定が行われなくなるのか?(写真:Xeno/PIXTA)
最近、両利きの経営が注目されています。知の探索と知の深化の二兎を追うことで、イノベーションを起こしてパフォーマンスを高めるという戦略ですが、現実には高い壁があります。両利きの経営を成功させるためには何が必要なのでしょうか? 今回のケースでも、「バリュースティック」を使うことで圧倒的なパフォーマンスを引き出すシンプルな戦略が見えてきます。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の戦略コースの対話から生まれた話題の戦略書の日本語版『「価値」こそがすべて! 』を翻訳出版した神戸大学大学院の原田勉教授に、そのエッセンスについて語ってもらった。

両利きの経営とグレシャムの法則

「悪貨は良貨を駆逐する」

この有名なグレシャムの法則はあらゆるところで成立します。この法則の元々の意味は、通貨のなかに悪貨(偽通貨)が一部でもあれば、通貨全体の信用性が著しく低下するということです。

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この法則を経営に最初に適用したのがハーバード大学の歴史家であったアルフレッド・チャンドラーです。悪貨は日常業務、良貨は戦略的意思決定であり、日常業務に追われると、戦略的意思決定が行われなくなる。これが「計画のグレシャムの法則」と呼ばれるものです。

最近流行りの両利きの経営は、まさにこのグレシャムの法則を適用したものです。両利きとは、既存の知を深めていく「深化」と、新たな知を求める「探索」から構成され、それを同じ企業、組織のなかで両立させていくことを指します。

一見すると深化と探索は相反する行動を必要とするため、同じ組織のなかで両者を混在させると、典型的には悪貨である深化が良貨である探索を駆逐していくことになります。

そのため、両利きの経営では、深化と探索を組織的に分離することが推奨されます。深化に特化したサブ組織と、探索に特化したサブ組織に分け、両者を緩やかに統合していくこと、ルースカップリングが両利きの経営での解決策になるでしょう。

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