この持ち回り連載の筆者の1人であるかんべえ氏(吉崎達彦・双日総研チーフエコノミスト)の「異常な日本はいつまで経っても賃上げできない」(7月30日配信)が、爆発的な読まれ方をした。読者の多くが「わが意を得たり」、と絶賛したからだろう。
なぜ「賃上げ」という言葉は間違いなのか
しかし、実は、彼らもかんべえ氏も180度間違っている。なぜなら「賃上げ」という考え方そのものが間違っているからだ。
賃上げ、という言葉にこだわり続ける限り、日本の賃金は上がらない。アメリカには、賃上げという概念が存在しない。だから、賃金は上がるのだ。
では「賃上げ」の何が間違いか。賃金は、政府が上げるものではもちろんないが、企業が上げるものでもないのである。
「賃上げ」は、空から降ってこないし、上からも降ってこない。「お上」からも、そして、経営者からのお慈悲で降って来るものでもないのである。それは、労働者が自らつかみ取るものなのである。経営者と交渉して、労働者が払わせるものなのである。
「資本よりも労働者が経営には不可欠だ」「より経営に役に立つ」と、経営者に思わせ、払わざるをえないようにして、初めて得られるものなのだ。したがって、日本の賃金が低いのは、労働者が、この闘争を「サボっているから」なのである。努力不足なのである。「政府の、お上からの経営者への指示」を待っていても、「雇い主の施し」を待っていても、永遠に得られないのである。
1日、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が、今年度の最低賃金について全国平均で31円の引き上げを勧告した。これは史上最大だそうである。
一見、政府が骨太の方針で「全国平均でできる限り早期に時給1000円以上を目指す」などと掲げたことで、今回の引き上げ勧告が実現したように見える。これと同じように、賃金全体もお上が引き上げてくれて、上がると勘違いしているメディアもいる。これは二重に間違っている。
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